研究課題/領域番号 |
24560098
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
森田 辰郎 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90239658)
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キーワード | 長時間窒化 / プラズマ窒化 / DLC被覆処理 / 摩擦摩耗特性 / 機械的性質 / 疲労強度 |
研究概要 |
平成24年度に得られた結果によれば,DLC被覆した機械構造用合金鋼において,摩擦摩耗特性および疲労強度の改善上,下地処理による硬化層の形成は効果的であった.この結果を踏まえて,平成25年度には焼入れ・焼戻しを行った上記合金鋼を供試材とし,これに下地処理として長時間の窒化処理を施して厚い硬化層を形成すことにより,DLC被覆材の高い接触応力下での摩擦摩耗特性および疲労強度のさらなる改善を目指した. 具体的には,通常の条件で長時間窒化した材料(以後,長時間窒化材)およびそのDLC被覆材について,表面および微視組織の観察,硬さ分布測定,残留応力測定,摩擦摩耗試験(室温,無潤滑),引張試験および疲労試験を系統的に実施した.長時間窒化材では,プラズマ窒化材よりも表面硬化層は顕著に厚かった.その結果,長時間窒化後にDLC被覆を施した材料では,摩擦係数がさらに低減されるとともにDLC層の耐久性が改善された.また,DLC被覆の有無に係らず,引張強度の低下なしに疲労強度は改善された.長時間窒化材およびそのDLC被覆材の疲労強度の改善率は,プラズマ窒化材およびそのDLC被覆材よりも顕著に高かった. 長時間窒化した場合には表面に厚い化合物層が形成され,また表面粗さも大きかった.そのため,DLC層の密着性が低下する可能性があったことから,上記の研究では化合物層を研磨により除去した後にDLC被覆を施した.長時間窒化により形成される化合物層の除去方法については,実用化を考慮し,今後検討が必要であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前述のように,現在までにプラズマ浸炭および窒化,長時間窒化,極短時間熱処理(チタン合金),FPB処理,DLC被覆処理およびそれらの複合処理により,各種チタンおよび鉄鋼材料の表面改質や母材部の組織制御を行い,表面層および母材部の性状に関する詳細検討,摩擦摩耗特性,機械的性質および疲労強度に及ぼす影響に関して系統的に実験結果を蓄積した. 得られた知見については,平成24年度に英文論文4件,解説記事2件および講演発表2件を通じて公開した.また,平成25年度には,英文論文4件,解説記事1件および講演発表7件(内3件は依頼・招待講演,1件は国際会議での講演発表)を通じて公開した.以上の実績が示すように,当初研究計画は十分に達成されたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
以上により得られた実験結果に基づき,当該研究の最終年度(3年目)に当る平成26年度には,以下の2点に焦点を絞って研究を推進する. 1.DLC被覆した鉄鋼材料において,摩擦摩耗特性および疲労強度の改善上,下地処理としての長時間窒化の効果は顕著であった.平成26年度には,技術的問題として見出された化合物層の除去方法として微粒子衝突処理を採用し,これにより長時間窒化材の化合物層を除去した後にDLC被覆を行い,その影響について検討する. 2.チタン合金については,極短時間熱処理の効果が系統的に明らかとなった.そこで,近年注目されている3Dプリンターにより作製したチタン合金に関し,極短時間熱処理の効果に係る基礎的な結果の蓄積を進める.
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