研究課題/領域番号 |
24560099
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梅田 純子 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (50345162)
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キーワード | 酸素固溶強化 / 水素化チタン / 純チタン |
研究概要 |
酸化チタン(TiO2)の熱分解により乖離・生成する酸素原子による水素化チタン(TiH2)の脱水素化反応を実証し,TiH2の分解とその後のTi結晶内への酸素原子の拡散に必要な焼結条件を見出した.先ず,TiH2粉末の示差熱重量分析を行った結果,1050 K以上で完全に熱分解されて純チタンが形成されることから,常温圧粉したTiH2粉末成形体を1073 K~1273 Kにて脱水素処理を兼ねた不活性ガス中焼結処理を施し,続いて熱間押出加工を行った.その結果,焼結温度1073Kでは,結晶粒界に水素化物が残存したが,焼結処理温度の上昇と共に水素化物の分散量は減少し,1273 K焼結材では,純チタン粉末押出材と同じ等軸α相を呈した.強度特性を調査した結果,焼結温度の上昇に伴い強度・耐力は低下したが,いずれも純チタン粉末押出材よりも優れた特性を示した.この要因は,脱水素反応過程で粉末表面に活性な新生面が形成され,また,同時に焼結が進行することによって界面に酸化皮膜が存在せず,粉末間結合が強固になることで純チタン粉末に比べて強度が向上したと考える.以上の結果から,TiH2粉末の脱水素処理には1273 Kが適正な焼結温度であることが明らかとなった.次に,TiH2粉末にTiO2粒子1.5 wt%を添加し,1273 Kにて脱水化処理を施した押出加工材を作製した.SEM-EBSDによる組識観察の結果,hcp金属押出加工材の典型的な集合組織を呈した.また,添加TiO2粒子から供給された酸素原子による固溶強化で,UTS:1100 MPa,破断伸び24%を示し,開発目標(UTS≧1100MPa、破断伸び≧20%)を達成した.本材料設計により優れた機械的性質を有するチタン基材料の創製が可能であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
粉末冶金法を用いてTiO2粒子由来の酸素固溶強化による完全レアメタルフリー・高強靭性チタン材の創製を目指し,平成25年度は上述の通り,次年度課題であるTiO2添加による強化機構の事前調査を実施できたことから,当初の計画以上に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
TiO2の熱分解によるTiH2の直接還元化を確立するため,TiO2添加量の適正範囲を見出す.これにより高強度(TS>1100MPa)と高延性(伸び>20%)の発現に必要な酸素量を定量的に明らかとなる.さらに,押出加工材を作製して,強度試験および延性試験を実施して評価を行う.これらの結果に基づき,チタン粉末の中間原料であるTiH2粉末を原料とし,TiO2由来の解離酸素原子の侵入固溶強化を利用した高強靭性チタン材の低コスト化プロセスを確立する.
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