研究実績の概要 |
チタン粉末の中間原料であるTiH2粉末を原料とし,TiO2由来の解離酸素原子の侵入固溶強化を利用した高強靭性チタン材の製法を確立するため,TiO2添加量の適正範囲を見出した.TiO2添加量を0, 0.5, 1.0, 1.5 wt.%とし,常温圧粉したTiH2粉末成形体を脱水素処理を兼ねた不活性ガス中にて焼結処理を施し,続いて熱間押出加工を行った.その結果,各押出材の酸素含有量はTiO2添加量に比例して増加しており,TiO2粒子無添加材(酸素含有量0.35 wt.%)と比較するとTiO2粒子1.5%添加材(酸素含有量0.94 wt.%)は約3倍の酸素含有量を示した.次に,押出材中における酸素の存在形態を解明すべくX線回折を行った結果,c軸格子定数は線形に増加し,一方でa軸格子定数はほとんど変化せず,TiO2粒子から固相拡散した酸素原子が押出材中に均質な固溶状態で存在することを示した.また,0.2%耐力および最大引張強さでは,TiO2粒子無添加材と比較すると,TiO2粒子1.5 wt.%添加材は0.2%耐力: 72%,最大引張強さ:51%と著しい増加率を示した.加えて,顕著な強度増加に伴う破断伸びの低下は2%程度に抑えられており,優れた高強靭性を確認した.さらに,引張強度は結晶粒径の減少とともに増大しており,最も微細な結晶粒径を呈するTiO2粒子1.5 wt%添加材は,酸素原子による固溶強化と水素による結晶粒微細化の効果により,最大引張強さ: 1158 MPa,破断伸び: 24%を示し,開発目標(最大引張強さ≧1100 MPa,破断伸び≧20%)を十分に満足した.この結果は,汎用チタン合金と比較すると最大引張強さ約1割,破断伸び約4割以上の特性向上が確認され,本研究で提案するプロセスは,純チタン材の高次機能化に極めて有効であることを実証した.また,チタン粉末の中間原料であるTiH2粉末の有用性を示し,本材料設計法の適用により,既存チタン合金を遥かに凌駕する超高強靭性純チタン基材料の創製が可能であることが明らかとなった.
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