研究課題/領域番号 |
24560101
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (10263625)
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研究分担者 |
竹元 嘉利 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60216942)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 弾塑性変形 / βチタン合金 / 二軸圧縮 / Ti-Nb合金 / 構成関係 |
研究概要 |
本研究は準安定βチタン合金を対象とし,β安定化元素添加量による変形メカニズムの違いが二軸圧縮弾塑性挙動に及ぼす影響を解明することにより,その変形を統一的に表現可能な構成モデルの構築を目指すものである.今年度は,代表的な準安定βチタン合金としてTi-20, 30, 35, 45mass%Nb合金圧延材を入手し,溶体化後焼入れ処理から電解研磨までの処理方法を確立した.続いて,単軸圧縮試験および2種類の比例ひずみ経路二軸圧縮試験を実施した.その結果,Ti-35Nbの圧延方向に圧縮した場合のみ,特徴的な3段階のひずみ硬化挙動,すなわちひずみ硬化率の停滞が認められた.このことは,Ti-35Nbにおいて変形双晶が優先的に活動することを示している.次に,二軸圧縮において,いずれの合金でも変形の進行に伴って異方硬化が成長するが,塑性仕事増分に対する異方硬化の成長度合はNb添加量が多いほど顕著になること,また,変形初期の等塑性仕事曲線には,合金組成に依存した異方性が現れること等,β安定化元素添加量に依存する変形の特徴を明らかにした.一方,圧縮後の材料に対して顕微鏡観察および後方散乱電子線回折法による結晶学的解析を行った.その結果,室温にてαプライム~準安定βの組織状態となっており,先に述べた処理方法の妥当性が証明された.また,Ti-20Nb,35Nb,45Nbにおいて,室温での主体的な塑性変形メカニズムがそれぞれ,応力誘起マルテンサイト,変形双晶,粗大すべりであることがわかった.これらの情報は今後,各合金の二軸圧縮塑性変形挙動の特徴とその主因を明確化するために極めて有用な知見となり得る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度における研究計画の主項目は,①複数種類のTi-Nb合金の入手と,それらに対するβ構造化処理手法の確立.②各材料に対する単軸・比例ひずみ経路二軸圧縮試験の実施とデータ取得,③顕微鏡観察および結晶学的解析よる変形メカニズムの同定,の3点である. ①については,市販されていないTi-Nb合金を研究用材料として製造委託し,Nb添加量の異なる4種類のTi-20, 30, 35, 45mass%Nb合金圧延材を入手した.また,真空電気炉を用いた溶体化後焼入れ処理によって,室温にてβ組織を得る手法を確立した.②については,自作の試験機を用いて単軸および二軸圧縮試験を実施し,今のところひずみ経路は限られているものの,一通りの応力-ひずみ関係を取得することができた.③については,電子顕微鏡による結晶解析に不可欠な研磨方法を確立し,各合金における変形機構を明確化するに至っている. 以上,本研究は今のところほぼ計画通り実施し,当初予定していた研究成果を得ることができていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は今のところ当初の予定通り順調に進行しており,研究遂行に大きな問題はない.今後は,二軸圧縮試験結果を種々のひずみ経路で実施し,必要な実験結果を蓄積すると共に,結晶学的評価手法を駆使して特徴的な弾塑性挙動の組織依存性等を明確化することにより,最終的な構成モデル構築に繋げる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題では,試験装置に関わる圧縮ダイス等の消耗部品や,熱処理や研磨等に必要な機械部品の購入と治具作製費用,顕微鏡観察および結晶学的解析に要する消耗物品の購入,研究の遂行に有用な情報収集や成果公表のための旅費などに,継続的な経費が必要となる.今年度の経費は,昨年度の余剰金と合わせてこれらの費用に充てる計画である.
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