研究課題/領域番号 |
24560101
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (10263625)
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研究分担者 |
竹元 嘉利 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60216942)
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 弾塑性変形 / βチタン合金 / 二軸圧縮 / Ti-Nb合金 / 構成関係 |
研究概要 |
本研究は準安定βチタン合金を対象とし,β安定化元素添加量による変形メカニズムの違いが二軸圧縮塑性挙動に及ぼす影響を解明することにより,その変形を統一的に表現可能な構成モデルの構築を目指すものである.今年度は研究期間の2年目として,Ti-20, 30, 35, 45mass%Nb合金圧延材に対する比例ひずみ経路二軸圧縮試験を,経路依存性が明瞭となる大変形域まで実施し,構成モデル構築に不可欠な硬化挙動について詳細な検討を加えた.その際,各素材に対して,ほぼ等方性に近い初期状態が得られるような前処理手法を検討し,選択実施している.結果として,Nb添加量によって異方硬化挙動に明瞭な差異が現れることがわかった.加えて,一連の試験から得られた等塑性仕事点に異方性降伏条件を適用するとともに,新たに異方硬化を評価するパラメータを導入することにより,その定量的評価に成功した.具体的には,すべり変形の寄与が大きいTi-20Nb合金とTi-45Nb合金では,Nb添加量が大きく異なるにもかかわらず等二軸圧縮方向への異方硬化挙動がほぼ類似していた.対照的に,変形双晶が主体的なTi-35Nb合金においては異方硬化の進展が大きく,変形双晶による集合組織形成の影響が推察される結果となった.一方,詳細な結晶方位解析を行ったところ,変形機構には,Nb添加量だけでなくひずみ経路も少なからず影響を及ぼす可能性が示唆された.これらの研究成果は構成モデル構築に極めて有用な情報であり,今年度は国内の代表的な講演会2件と,国際会議1件で報告するに至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度における研究計画の主項目は,(1)複数種類のTi-Nb合金に対する比例ひずみ経路二軸圧縮試験の大変形域までのデータ取得とその包括的検討,(2)Nb添加量に依存する主要塑性変形機構が異方硬化挙動に及ぼす影響の検討とその定量的評価,(3)非比例ひずみ経路二軸圧縮試験の実施,の3点であった. (1)については,比例ひずみ経路二軸圧縮試験を,相当塑性ひずみ0.3に近く,異方硬化が明瞭となる大変形域まで実施し,一連のデータを取得することができた.(2)については,(1)によって得られた等塑性仕事点に対して異方性降伏関数を適用するとともに,異方硬化を表現するパラメータを新たに導入することによって,その定量的評価を行った.(3)については若干計画から遅れているものの,自作試験機において非比例ひずみ経路を精度良く実施する手法を確立し,現在,データ取得を行っているところである. 以上のように,本研究はほぼ当初の計画通り進展しており,今後の最終目的に向けた研究遂行にも大きな支障は無いと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は3年計画である本研究課題の最終年度であり,今年度までに得られた研究成果を基に,本課題の最終目標である構成モデル構築に繋げる予定である.具体的には,これまでの比例ひずみ経路に加えて,構成モデルの検証に必要な非比例ひずみ経路におけるTi-Nb合金の塑性挙動に関するデータを取得する.また,Nb添加量に応じて変化する主体的あるいは副次的な活動変形メカニズムの影響について定量的評価を行う.これらの結果を総合的に活用することによって,高精度な構成モデルの構築を試みる.なお次年度は大学を異動するが,岡山大学が所有している結晶方位解析機能付き電子顕微鏡については,費用を負担することによって継続して使用できる許可を得ており,研究遂行に支障はない.
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時より,本研究は3年間にわたって遂行する計画であり,今年度は試験装置部品の消耗や前処理等に必要な物品の消費が比較的少なかったことから,次年度使用額が生じている. 本研究課題では,試験装置に関わる消耗部品の入手や,前処理等に必要な消耗品類の購入,さらには研究遂行に付随する情報収集や成果公表旅費等が継続的に必要である.加えて,4月からの大学異動に伴って岡山大学の所有設備である結晶方位解析機能付き電子顕微鏡の使用費負担を要する.次年度の経費は,今年度の余剰金と合わせてこれらの費用に充てる計画である.
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