本研究は準安定βチタン合金を対象とし,β安定化元素添加量による変形メカニズムの違いが二軸圧縮挙動に及ぼす影響を解明することにより,その変形を統一的に表現可能な構成モデルの構築を目指して実施したものである. 今年度は最終年度として,Ti-Nb合金における主要な塑性変形メカニズムの定量評価を試みた.まず,昨年度とは異なる比例ひずみ経路二軸圧縮試験を追加的に実施して結果の確実性を増すと共に,連続的な電子顕微鏡解析によって変形メカニズムを調べた.続いて,異方硬化表現に導入した異方性パラメータに関して,二軸圧縮時にすべりのみが活動する純鉄ならびにすべりと副次的な変形双晶が活動する純チタンとの比較を行うことにより,Nb添加量に応じて現れる特徴的な変形メカニズムが二軸圧縮時の力学的挙動に与える影響を評価した.以上の成果については,既に国内の代表的な講演会および国際会議にて報告を行っている. 研究期間内で得られた成果を総合的に整理した後,変形双晶などの特徴的な変形メカニズムの影響を組み込んだ構成モデルについて検討を開始した.精度が十分とは言い難いものの,Ti-Nb合金の二軸圧縮挙動を表現する構成モデルの構築に繋げることができた.また,新たに非比例ひずみ経路二軸圧縮を実施し,ひずみ経路変化後の硬化挙動が,Nb添加量による変形機構に依存することを見出した.これらの非比例ひずみ経路における結果を,構成モデルの更なる精度向上に役立てる計画である.以上の成果については,平成27年度の学会発表を予定している. なお,計画当初に挙げていた温間域の二軸圧縮弾塑性挙動について予備的検討を行ったところ,Ti-Nb合金では,昇温時のわずかな酸化がβ安定化に影響し,力学的特性を変化させる可能性のあることがわかった.すなわち温間試験は雰囲気制御に特別な配慮が必要であり,装置改良も含めて今後の課題としたい.
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