研究課題/領域番号 |
24560102
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山辺 純一郎 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (20532336)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水素 / 皮膜 / 水素脆化 / 水素透過 / 第一原理計算 |
研究概要 |
2種類の表面皮膜(アルミ酸化物系二層皮膜,アルミ酸化物系三層皮膜)を準備し,これらの皮膜をオーステナイト系ステンレス鋼SUS304から製作した円柱試験片とパイプ試験片の全面に付与した.二層皮膜は,Al酸化物(アルミナ)とFe-Al合金層で構成されており,皮膜厚さは約0.015mmである.三層皮膜は,Al酸化物, Al層およびFe-Al合金層で構成されており,皮膜厚さは二層皮膜と同じ約0.015mmである.皮膜を付与した円柱およびパイプ試験片を圧力10~100MPa,温度270℃ の水素ガス環境に200時間曝露し,皮膜の水素ガスバリア性を明らかにするとともに,水素ガスバリア性に及ぼす曝露圧力の影響を調査した.その結果,二層皮膜と三層皮膜を付与した試験片は,同じ厚さのアルミ酸化物層を有しているにも関わらず,三層皮膜の方が優れた水素ガスバリア性を有していた.これより,三層皮膜では,一般的に低圧水素ガス(~kPa)の評価で高い水素ガスバリア性が示されているAl酸化物層のみが水素侵入を抑制したのではなく,Al酸化物層,Al層並びにFe-Al合金層が協同して,試験片内への水素侵入を抑制したといえる.さらに,二層皮膜では,曝露圧力が高くなると,水素ガスバリア性が低下したのに対し,三層皮膜では,圧力100 MPaと高い水素ガス圧力においても,極めて高い水素ガスバリア性を有していた. DFTによる第一原理計算では,Fe表面における水素の解離反応に及ぼす残存酸素の影響について検討した.その結果,残存酸素の存在により,酸素原子がFe原子と強く結合した状態がFe表面に形成され,水素吸着が妨げられることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミ酸化物系二層皮膜とアルミ酸化物系三層皮膜の水素侵入特性に関する詳細な検討を行った.その結果,皮膜の水素侵入のメカニズムをおおよそ解明できた(研究計画1の皮膜の水素侵入のメカニズムの解明).繰返し負荷を与えた皮膜材の水素侵入特性や破壊状況の評価(研究計画2の皮膜の微小き裂発生メカニズムと疲労き裂進展特性の評価)並びに第一原理計算による鉄酸化物とアルミ酸化物表面での水素解離反応の違いに関する検討(研究計画3の第一原理計算による界面反応解析)についても実施中であり,おおむね計画通りに研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には,皮膜の水素ガスバリア性に及ぼす曝露圧力の影響と水素侵入抑制に有効な構造を明らかにするため,皮膜の水素侵入に関する詳細な研究を実施した.平成25年度には,皮膜の強度や耐久性の評価に重点を置き,優れた水素ガスバリア性と強度を有する表面皮膜を開発する.さらに,第一原理計算等では,水素ガスバリア性の高い皮膜構造の探索や水素解離に及ぼす曝露圧力の影響について検討し,実験結果を科学的に説明していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費に未使用額が生じたが,研究計画に変更はなく,前年度の研究費を含め,当初の予定通りの計画を進めていく.
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