研究課題/領域番号 |
24560102
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山辺 純一郎 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (20532336)
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キーワード | 水素 / 皮膜 / 水素脆化 / 水素透過 / 第一原理計算 |
研究概要 |
前年度には,独自に成分調整した溶融アルミニウム合金を用いた二種類の表面皮膜(アルミ系二層皮膜(アルミナ/Fe-Al合金),アルミ系三層皮膜(アルミナ/アルミニウム/Fe-Al合金))を準備し,これらの皮膜をオーステナイト系ステンレス鋼SUS304の円柱試験片とパイプ試験片に付与した.皮膜付きの試験片を圧力100MPa,温度270℃の高圧水素ガス中に200時間曝露して,皮膜の耐水素透過特性を評価した結果,アルミ系三層皮膜が優れた耐水素透過特性を有していることが分かった.本年度は,アルミ系三層皮膜の耐水素透過特性に及ぼす引張負荷応力の影響について検討した.さらに,アルミ系三層皮膜(開発皮膜)と通常の純アルミニウムを用いた皮膜(通常皮膜)の組成や力学挙動を比較し,開発皮膜と通常皮膜の構造の違いについて調査した.また,第一原理計算を用いて,酸素ガスと水素ガスが共存する場合の鉄表面への水素吸着についても検討した.得られた結論を以下に示す. (1)母材の降伏応力よりも高い応力が作用すると開発皮膜にき裂が発生し,開発皮膜の耐水素透過特性が低下する.(2)応力が母材の降伏応力以下であれば,繰返し応力が負荷されても皮膜にき裂は発生せず,開発皮膜は優れた耐水素透過特性を有する.(3)き裂は皮膜を構成するFe-Al層から発生する.このことから,Fe-Al層が柔軟であることが,皮膜の耐久性の観点から重要である.(4)開発皮膜は,通常皮膜に対してFe-Al層の硬さが低く,靭性に富む構造を有している.(5)第一原理計算から,酸素は水素よりも鉄表面に吸着されるのが早く,数ppmの酸素でも鉄表面への水素吸着が阻害される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,引張負荷を与えた皮膜材の水素侵入特性や第一原理計算により鉄表面への水素吸着について検討した.その結果,応力が母材の降伏応力以下であれば皮膜にき裂は発生せず優れた耐水素透過特性を有することが分かった.また,数ppmでの酸素でも鉄表面への水素吸着が阻害されることが分かった.当初想定した研究ができており,おおむね計画通りに研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,表面皮膜をSUS304以外の母材へ適用し,様々な母材を用いて開発皮膜の効果を明らかにする.また,表面皮膜を付与したパイプを製作し,高圧水素ガスを用いた圧力サイクル試験を実施することにより,実部品での開発皮膜の有用性を明らかにする.さらに,アルミ系皮膜以外の皮膜の可能性についても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
想定した金額よりも,試験片加工費が若干安価であったため. 平成25年度の研究費に未使用額が生じたが,研究計画に変更はなく,前年度の研究費を含め,当初の予定通りの計画を進めていく.
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