研究課題/領域番号 |
24560104
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岩本 知広 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (60311635)
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キーワード | 超音波接合 / 透過型電子顕微鏡 / マグネシウム合金 / ガラス |
研究概要 |
本研究では3つの研究を並行して行っている。本年度のそれぞれについての結果は以下のとおりである。(1)可逆的なナノ構造体を含んだインサート材を用いたMg合金の抵抗スポット溶接法の開発 本年度は、より高密度のLPSO相を含んだMg86Zn6Y9合金をインサート材として市販のMg合金AZ31B薄板同士の抵抗スポット溶接を行った。インサート材なしの直接接合の場合やMg96Zn2Y2合金をインサート材にした場合と比べ、低い溶接電流の領域で接合体が顕著に高い強度を示すことが確認された。接合界面では溶接電流に応じ粒界へLPSO相が析出する様子が観察された。(2)走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡その場観察法によるMg96Zn2Y2合金変形過程の直接観察 Mg96Zn2Y2押出し材に対して応力を加えた場合、クラックはLPSO相内部には侵入する傾向が低いこと、また侵入した場合でもジグザグに進行することなどが明らかになった。これに対して、スポット溶接の溶融組織内をクラックが進行する場合、LPSO相とMg母相との界面でまずボイドが発生し、それらが連結する形でクラックがLPSO相を横切ることが分かった。これはLPSO相の整合析出による母材との主すべり面の共有と、すべり系の数の差に起因するためと考えられた。(3)接合界面にナノ構造体をはさんだ超音波接合法の開発 ガラス表面にAgを被覆しAlと超音波接合した試料に対し引張り試験を行ったところ、破面の微小領域においてAlの延性破壊が観察された。界面では前年度のAl/Mo-ガラス接合とは異なり、反応相Ag2Alが断続的に生成していた。これから本系では反応相生成領域のミクロな分布が全体の強度に影響を及ぼしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度以降行う予定であったMg85Zn6Y9板をインサート材としたMg合金抵抗スポット溶接については、低溶接電流で高い接合強度を持つ接合体を作製することに成功した。来年度以降の接合プロセスの解析により本接合法の特性を詳細に明らかにできると考えられる。また電子顕微鏡内引張試験による動的機械特性の解明では、LPSO相の破壊過程が判明した他、ナノAg薄膜を接合界面に挿入した超音波接合についても、接合可能な条件が明らかになってきた。来年度は補足の実験を進めると共にこれら研究の総括を行う。研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果を踏まえ、また最終年度の総括を鑑み以下の研究を推進する。(1)Mg86Zn6Y9板をインサート材とした抵抗スポット溶接では、接合機構および接合部組織の詳細な解析を行う。接合部の接合中の温度変化測定およびMg96Zn2Y2、Mg85Zn6Y9合金などの抵抗を測定すると共に接合部のより詳細な組織解析を行う。(2)Mg96Zn2Y2同志の抵抗スポット接合では接合法、機械特性など一定の研究成果を得た。これより接合部では、母材とは異なる破壊機構を有する鋳造組織により機械的強度が低下することが明らかとなった。本年度はこれに対して、ガラスの超音波接合をMg96合金同志の接合に応用する。超音波接合は一般的には固相接合であるため、母材の強度を保った接合が期待できる。またLPSO相を含むような2相合金では、超音波接合が組織変化にどのような影響を与えるのか興味深い。(3)超音波接合では表面の状態が、接合過程に大きく影響することが分かっている。そこで、表面の状態を様々に変化させた母材に対して超音波接合を行うことで、その界面ナノ組織に対する影響を明らかにする。
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