原子炉の安全性研究を推進する上で、ショットピーニング等の表面処理により疲労破壊を制御することが可能となる技術の開発が求められている。一般に、疲労強度は材料の表面状態に強く影響されることが知られている。本研究では、ショットピーニング等の表面処理の条件から疲労強度を評価できるシステムの構築を目的とする。本年度は主に、疲労試験と疲労モデリングを実施した。材料には前年度までと同様、市販の316系ステンレス鋼を用いた。まず、適当な旋盤加工条件で旋盤加工を実施することで、小野式回転曲げ疲労試験片を作成した。次に、前年度までの研究で得られた応答曲面モデルを基に、圧縮残留応力がモデルの予測可能範囲内で最大となるようなショットピーニング条件(ショット粒径・噴射圧力・カバレージ)を決定し、その条件で旋盤加工後の小野式回転曲げ疲労試験片に対してショットピーニング加工を実施した。また、そのショットピーニング材の比較材として、旋盤加工後の小野式回転曲げ疲労試験片に対して残留応力除去のために900℃・10分間保持の熱処理を施した焼鈍材も作成した。ショットピーニング材と焼鈍材に対して、表面粗さ計、硬度計、X線残留応力測定装置を用いた疲労試験片表面の粗さ、硬さ、残留応力の測定後に小野式回転曲げ疲労試験機を用いた高サイクル疲労試験を行い、両者の疲労限度を比較した。その結果、ショットピーニング材は焼鈍材よりも圧縮残留応力の影響により疲労限度が向上することを示した。
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