研究課題/領域番号 |
24560106
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
木之下 広幸 宮崎大学, 工学部, 助教 (80295196)
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キーワード | リサイクル / 廃棄ガラス繊維強化プラスチック / セラミック |
研究概要 |
1.本研究のセラミックを製造する方法は,プラスチックの種類を問わないものと考えられる.また,プラスチックに含まれるガラス繊維の含有率が高いほど高強度のセラミックが得られるものと考えられる.これらのことを実証するために,50%以上(mass%)のガラス繊維を含有する熱硬化性樹脂を粘土と混合・焼成して試験片を作製し,その主な材料特性について検討した.その結果から,熱可塑性プラスチックを用いた場合と同じようにガラス繊維により強化された多孔質セラミックを作製可能であること,ガラス繊維の含有率が高いGFRPを用いるほど高強度のセラミックが得られることを確認した.また,GFRPの混合率が20%程度まではセラミックの曲げ強度は低下しないことなどがわかった.本研究結果は,日本機械学会講演会において発表した. 2.セラミックの高強度および多孔質な性質を活かし,ヒートアイランド現象の対策として,日射による路面温度の上昇を抑制できるとともに寒冷地でも適用可能な高い耐凍害性を有する舗装用ブロックを開発することを目的に,セラミックの熱的特性および耐凍害性について検討した.その結果,本研究のセラミックはモルタルよりも輻射熱による表面温度の上昇を低く抑えることができること,特に吸水させた状態において抑制効果が高いこと,粘土とGFRPを混合・焼成したセラミックの曲げ強度に及ぼす凍結融解の影響は小さく,高い耐凍害性を有していること,を明らかにした.本研究結果は,日本機械学会講演会において発表した. 3.昨年度に引き続きセラミックに直にコケを活着させた緑化基盤材の開発を行った.本年度は主にコケの耐風性に優れた基盤材の開発を行った.その結果,基盤材表面に適切な寸法の凹凸を設けることにより,表面近傍の流速が低下し,コケの耐風性が向上することを明らかにした.本研究結果は「日本実験力学会誌」に公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①セラミックの主な材料特性を明らかにすること,②材料設計手法の確立,③廃棄GFRPの粉砕方法の確立,④ヒートアイランド現象の対策として,保水性インターロッキングブロックおよび緑化基盤材への適用を図ること,を具体的な目標に掲げた. ①について,GFRPの混合率とセラミックの気孔率との関係等は明らかとなった.セラミックの強度については静的な曲げ強度はほぼ明らかとなった.熱的特性については,輻射熱による表面温度変化に関する特性はほぼ明らかとなった.熱伝導率の測定(依頼試験による)は高価であるため断念することとし,実験により粘土とGFRPを混合・焼成したセラミックのみかけの熱伝導率を測定し,粘土のみからなるセラミックおよびモルタルと比較・検討した.以上のように,この目標は概ね達成されているが,一部の実験,結果のまとめ,および学術誌への公表等が完了していない. ②については,粘土に対するGFRPの混合率を決定し,目標とするセラミックの強度を得ることが可能となっている.したがって目標はほぼ達成できている. ③については,廃棄GFRPを液体窒素により冷却した後に粉砕する方法を用いることにより,粉砕効率を大幅に高めることが可能になっている.したがってこの目標も達成できている. ④の保水性インターロッキングブロックへの適用については,本年度でセラミックの耐凍害性,輻射熱の抑制効果を明らかにすることができた.また,未公表であるが圧縮強度に関する実験結果も得られている.しかし,疲労強度については,疲労試験機の冷却水部品が損傷したため検討できなかった.したがって,疲労特性に関する検討を除いて目標は達成されている.緑化基盤材への適用については,セラミックに直にコケを活着させた緑化基盤材を開発することができた.また,コケの耐風性に優れた基盤材形状を見出すことができた.したがって,目標はほぼ達成されている.
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今後の研究の推進方策 |
研究の目標および研究計画に大きな変更はないので,達成できていない課題について引き続き研究を行う.具体的には,以下の課題についての研究を主に行う. ①セラミックの強度に関して,GFRPに含まれるガラス繊維の含有率とセラミックの曲げ強度との関係を定量的に明らかにするための追加実験,1100℃で焼成した場合のセラミックの曲げ強度に関するデータの追加,セラミックの成型圧力と圧縮強度の関係を明らかにするための追加実験,セラミックの繰り返し疲労試験,以上を行う. ②保水性インターロッキングブロックの開発に関して 屋外において,セラミックの輻射熱による表面温度変化の測定実験を行い,実際の日射による表面温度上昇の抑制効果を明らかにする. ③これまでの研究結果のまとめを行い,学会発表,学術誌等への公表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要な少額の消耗品がなかったから. ・論文掲載費・論文校閲費・原材料等の消耗品費・国内学会参加費
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