研究課題/領域番号 |
24560111
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
末益 博志 上智大学, 理工学部, 教授 (20134661)
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研究分担者 |
長嶋 利夫 上智大学, 理工学部, 教授 (10338436)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 複合材料 / 確率論的解析 / 補強板 / 圧縮 / 剥離 |
研究概要 |
初年度は,①接着部の剥離強度、②板厚、③弾性特性 の項目に関して,統計データ取得実験を実施し,多くの実験データを取得することができた.この実験データに関して,空間的な確率変動とサンプルごとの確率変動の関係を導くために,統計的な処理を実行している.特に板厚と弾性特性のデータに関して,板面内で空間的に変動する確率関数の問題として定式化を試みているが,これらの確率特性を取得するには,大量のデータを必要とするだけでなく,絶対値に対して小さい確率変動量を精度よく特定するためには確率変動量に比べて測定誤差が十分小さくなければならないことが判明した.従来の単純な統計処理では空間的な層間を精度よく与えることはかなり困難であることを見出した.測定誤差は空間的に相関を持たないことを考えると,滑らかな関数の和として空間変動を表し,その重み係数を統計処理することで,測定誤差を実際の物理量の変動と分離することが可能であり,この方向で整理をする計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最重要課題であった,積層板の確率特性導出をするデータ取得実験を終えて,統計処理をするに足る膨大なデータを取得することができた.これにより不十分であるが,板厚と弾性特性の平均と標準偏差だけでなく空間的な相関関数を与えることができた.本年度は,データを空間的に平均をとるという作業を実行したが,測定誤差が無視できない程度入った量の統計量になっている.このデータを修正する手法について考察し空間的に分布する量の確率量を算定する手法に関して提案する予定である. フランジ端を模擬した試験片を作成し,フランジ端からのはがれ強度を求める曲げ実験を実施し,フランジ端からの剥がれ発生荷重を,フランジ端に樹脂がある場合とない場合でそれぞれ求め,フランジ端に応力の特異性がある場合にはクラックの進展条件で破壊を判断することが可能であること,樹脂を残した場合には樹脂の割れ条件が破壊を支配することが示された.一枚の板から切り出された試験片で値のばらつきは思った以上に小さかった.また進展条件で解析することにより,安全側の解が得られることが示された. 上記のように実験に関しては順調に知見が蓄積できた. 解析的研究は,実験結果から統計量の整理に新たな手法が要求されたので,当初の予定した理論計算は,この統計量処理法が完成し,より確からしい統計値を用いて実行する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施した,材料特性の基礎データをさらに蓄積・整理する.さらに,得られた材料の特性データをを再整理し,精度の高い統計データを作成する. 得られた確率特性を考慮して解析モデルを作成し,数値シミュレーションを開始する.最初はモンテカルロ法により統計的に解を導き,応答や強度の確率特性を数値実験的に求める.また半解析的な数値解析手法を展開中であり,モンテカルロ法による結果および実験結果との比較により本解析手法の妥当性を議論する.
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次年度の研究費の使用計画 |
補強材とパネルの剥離強度と応力集中・応力特異性に関する実験のための試験片4枚として(36万円)と寸法(特に積層板厚さ)・材料特性の確率的構造を実験用の擬似等方性積層板10枚程度(30万円)を購入する.このための試験片およびひずみゲージ等の実験用の消耗品を購入予定(9万円)である.本研究を遂行するための大学院生に依頼する作業への謝金として15万円(時給1,090円×7時間×述べ20日15万円)を積算する.研究成果を発表するために, 海外出張1回,国内出張2回を予定し,国内出張費用(5万円×2回=10万円), 海外出張費用(30万円×1回=30万円),を計上する.
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