研究課題/領域番号 |
24560112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
辻 裕一 東京電機大学, 工学部, 教授 (10163841)
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研究分担者 |
小林 隆志 沼津工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10161994)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インデンテーション試験 / 粘弾性 / クリープコンプライアンス / シール材料 / 時間-温度換算則 / 弾性体・粘弾性体の対応原理 |
研究概要 |
本年度は,下記の三項目について研究を実施した. 一番目に,TMA(熱機械分析装置)ベースのナノインデンテーション試験機の開発を行った.TMAが通常備えている球状プローブによるインデンテーションでは,応力とひずみの評価における代表値があいまいである.そこでプローブ先端にナノインデンテーションで標準的に用いられている三角錐圧子を装着できるように改造した.TMAには,広範囲な試験温度に対応可能な低温用電気炉を設置した.その後,押込み荷重と押込み変位の校正,熱膨張の影響および補正方法の検討を行った.改造したTMA によって高温ナノインデンテーション試験を実施し,測定データの妥当性を検証した.以上より,高分子材料の高温粘弾性特性の評価に対して十分な精度での測定が可能なことを確認した. 二番目に,高分子材料の高温粘弾性特性の評価方法の確立のための基礎実験として,高分子材料・シール材料について比較的短時間の高温粘弾性特性のデータを,温度を変えながら取得した.長い時間領域までの粘弾性特性を前述の各温度の粘弾性特性に時間-温度換算則を適用することによって,マスターカーブの作成を試みた.これにより,三角錐圧子を用いる場合のマスターカーブ構築法を確立し,これにより長時間の高温粘弾性特性の推定が可能となった. 三番目に,シール製品の高温微少リーク特性の把握を行った.次年度以降のシール製品の高温粘弾性特性評価に先立ち,試験荷重,試験温度を決定するための予備調査を行った.シール製品が組み込まれた状態でのシール面の面圧分布のFEM 解析を実施するとともに,密封性能試験から,所定のシール面圧,内圧,温度等におけるシール製品の微小リーク特性を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請段階での計画では,(1)TMA(熱機械分析装置)ベースのナノインデンテーション試験機の開発,(2) 高分子材料の高温粘弾性特性の評価方法の確立,(3)シール製品の高温微小リーク特性の実験モデルの決定,の3つの研究課題を掲げた.それぞれの研究課題に関して,当初の目標をほぼ達成し,次年度以降の研究の基礎データも取得できた.以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降,次の研究項目を実施する予定である. 一番目に,研究初年度に確立したTMAを用いるインデンテーション試験によるマスターカーブ構築法に基づき,シール材料の長時間・高温粘弾性特性を評価する.同時に粘弾性体がガラス状弾性領域からゴム領域に移る温度である転移温度を,TMAを用いて各種シール材料について測定を行う.TG-DTA(示差熱-熱重量同時測定)による転移温度の測定および測定結果の比較も行う.転移温度は時間換算則に用い,クリープコンプライアンスのマスターカーブの作成を行う. 二番目に,マスター曲線からガスケットのクリープひずみを予測する方法を検討する.2軸拘束状態という仮定のもとで得られるフランジ中のガスケットの応力状態に対して弾性体・粘弾性体の対応原理を適用し,クリープコンプライアンスとガスケットのクリープひずみの関係を求める.高温ナノインデンテーション試験の実施では,縦弾性係数等の機械的性質の変化も測定できる.シール製品としてのリーク確率/寿命に直接影響を及ぼしているフィラーの熱減量などのシール材料そのものの劣化の評価を検討する.他の影響因子として,シール面圧を与えている締結体全体のコンプライアンスが挙げられる.FEM解析をシール面圧と運転条件の関係を推定するために実施する. 最終的には,シール製品の高温シール特性と,シール製品の粘弾性モデルに基づき,シール材料の劣化の定量的な評価を実施し,シール製品のリーク確率の評価と高温寿命の予測方法を確立する.
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次年度の研究費の使用計画 |
TMAを用いるインデンテーション試験によってマスターカーブを構築し,これによってシール材料の長時間・高温粘弾性特性を評価する.TMAと共に液体窒素自動冷却ユニット(設備備品費で購入予定)を用いて広範囲の試験温度のデータを収集し,時間-温度換算則の精度を向上させる.同時に粘弾性体がガラス状弾性領域からゴム領域に移る温度である転移温度を,TMAを用いて各種シール材料について測定を行う.現有設備であるTG-DTA(示差熱-熱重量同時測定)による転移温度の測定および測定結果の比較も行う.転移温度は時間換算則に用い,クリープコンプライアンスのマスターカーブの作成を行う.他の試験方法によるガスケット高温粘弾性特性との比較として,現有の高温ガスケット密封性能試験機により,比較的短時間ではあるが,ガスケットの高温における密封特性と変形特性を評価できる.この試験結果と高温ナノインデンテーション試験結果を比較し,本研究で提案している手法の妥当性を検証する.なお,消耗品費は,TMAの圧子の改造,ならびに試験片,試験ガス,密封性能試験に必要な部品類に使用する.
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