研究課題/領域番号 |
24560112
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
辻 裕一 東京電機大学, 工学部, 教授 (10163841)
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研究分担者 |
小林 隆志 沼津工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10161994)
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キーワード | インデンテーション試験 / 粘弾性 / クリープコンプライアンス / シール材料 / 時間-温度換算則 / 弾性体-粘弾性体の対応原理 |
研究概要 |
本研究では,短時間のインデンテーション試験から得られた高分子材料のクリープコンプライアンスに対して時間-温度換算則を適用し,材料の高温・長期粘弾性特性を予測する方法の確立を目指している.高温状態に置かれた高分子材料には,粘弾性特性とは無関係の大きな永久変形が生じるが,本年度は,この影響を考慮するために高分子材料で構成されるシートガスケットの予ひずみの補正方法に関して検討を行った. 今年度の成果を箇条書きにより,列記すると以下の通りである: (1) TMAにバーコビッチ圧子を取り付けてインデンテーション試験を行い,高分子材料の高温におけるクリープコンプライアンスを求めた。(2) 高分子材料の各温度におけるクリープコンプライアンスに時間-温度換算則を適用することにより,基準温度TR のマスター曲線を作成した。マスター曲線は1本の直線で表されることからW.L.F式の適用の妥当性を確認した。マスター曲線は105時間領域まで外挿可能である。(3) マスター曲線に基づきガスケットのクリープひずみを予測するために,クリープコンプライアンスと高分子材料のクリープひずみの関係式を示した。(4) 高分子材料で構成されるシートガスケットのクリープひずみに関して予測と実験を比較すると,対数時間に対する変化率は等しい。(5) 予ひずみを補正したクリープひずみ予測式は測定結果とほぼ等しい。提案するクリープひずみ予測方法は,高温における長期クリープ・リラクゼーション特性の予測に有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では(1)シール製品の高温粘弾性特性の評価と(2)締結体全体のコンプライアンス解析を,主に調査研究することになっている. (1)については,昨年度までの成果に基づき,高温長期クリープコンプライアンスを予測できるようになった.さらに対応原理を用いてクリープコンプライアンス式のシール製品への適用が可能となり,また予ひずみの補正方法に関して進展があった.ただし,インデンテーション試験において,クリープコンプライアンスからの塑性変形の除外方法については課題が残っている.(2)については,シール面圧と運転条件の関係を推定するために用いるシール面圧を与えている締結体全体のコンプライアンスを求めるためのFEM解析モデルが完成した. 以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度,最終年度は次の研究項目を実施し,研究のまとめとする予定である. 研究の担当としては,研究代表者はシール材料の高温粘弾性特性評価全般,研究分担者は微小リーク特性とシール面圧の減少の解析を主に行う.シール材料の高温粘弾性特性評価については,課題として残されているクリープコンプライアンス評価における塑性変形の除外方法について検討し,三角錐圧子,球圧子の両方について除外方法の妥当性を検証する.インデンテーション試験から予測されるシートガスケットの高温長期粘弾性特性は,高温ガスケット密封特性試験の結果,フランジ継手試験体の高温試験結果と比較し,本予測方法の妥当性を検証する. 最終的には,シール製品の高温シール特性と,シール製品の粘弾性モデルに基づき,シール材の高温寿命予測につなげられる定量的な評価を実施し,まとめとする.
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