本研究の目的は,コーティング技術により優れた生体親和性と高強度を有する新しいインプラント材料を開発することである.この研究では,インプラント材料のためチタン合金の表面改質法として,コールドスプレー技術を選択し,活用した;すなわち,コールドスプレー法によりチタン合金Ti-6Al-4V上に多孔質純チタンコーティングを成膜した.コールドスプレー生体コーティング材の機械的特性に及ぼす成膜条件と成膜後熱処理の影響を調査した.実験結果から,開発した生体チタンコーティング材は,低弾性率,高密着強度,かつ,十分な引張強度を有することが明らかになった.コーティングの密着性と皮膜強度が成膜後熱処理により著しく向上できたことから,優れた生体コーティングを得るために最も重要な因子は成膜後熱処理であった.密着性と皮膜強度は成膜プロセス中の溶射粒子の高速衝突によって生じたナノ結晶粒の再結晶挙動によって向上したことが明らかとなった.この研究で開発したコールドスプレー生体コーティング材は十分な疲労特性を有していた.
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