本研究は,材料工学的な観点から外力によるPZT素子の圧電特性劣化のメカニズムを解明すること,高ひずみ下においても圧電特性劣化が小さい安定性に優れたPZT素子を開発すること,PZT素子の圧電特性劣化を補完できる信頼性に優れたSHMシステムを開発すること,開発したSHMシステムをCFRP接着接合部材の損傷診断に応用し実用化すること,などを目的としているが,平成26年度については,(1)CFRP接着接合体の試作と試験,(2)損傷診断システムの性能評価を行うことを当初の目的としたが,前年度までの結果から,PZT素子の損傷状態と圧電特性との関係をより精緻に把握する必要があることが示唆され,(1),(2)に加えて,PZT素子の強度特性評価方法を改善し,微視損傷と感度劣化との相関を再検討した.(1)については,高じん性エポキシ樹脂を用いたCFRP接着接合体を作成し,接着接合部の損傷状態と弾性波(ラム波)の伝播挙動との関係を明らかにした.その結果,接着層の剥離進展に伴って,弾性波の伝播が遅延することが明らかになった.(2)については,PZT素子の損傷による波動伝播挙動の変化と接着層の損傷による波動伝播挙動の変化を分離について,課題が残り,PZT素子の損傷挙動に対するより詳細な知見が必要であることが示唆された.これに対し,前年度までに行った,2個のPZT素子を対にした評価方法を改め,1個のPZT素子とひずみゲージとを組み合わせた試験方法を考案した.加えて,PZT素子の損傷状態についてその場観察を行い,PZT素子の圧電特性劣化の初期の要因が剥離損傷ではなく,垂直応力によるマイクロクラックであることが明らかになった.また,数値解析の結果から,前年度までに検討した電極を補強板とした強度改善が,このようなマイクロクラックにも有効であることが示唆された.
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