スパッタエッチングにより作製した微細突起物は、摩擦搬送用ロール、塗膜はく離防止用・光反射防止用の型・転造ロール(高分子膜表面に穴を付与する)など、多方面に利用できるが、型やロールの寿命を保証するためには、突起物の耐久性向上が必要である。 本年度は、昨年度に続き、プラズマ窒化により硬化した微細突起物が、どの程度の耐久性・転写性をもつかを評価した。まず、プラズマ窒化したSUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼の円錐状突起物(底面直径20ミクロンメータ以上)をポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)板に押しつけて穴を形成し、突起物先端の損傷形態を走査型電子顕微鏡で調べた。その結果、平均面圧13MPaの場合、スパッタエッチングのままの突起物は、いずれの高分子板に対しても、先端が変形した。一方、プラズマ窒化した突起物は、PEおよびPVC板に対しては先端が変形しなかったが、PC板に対しては、先端が変形した。つぎに、平均面圧78kPaとして、PEおよびPVC板に対し1000回の繰返し押しつけ試験を行った結果、スパッタエッチングしたままの突起物はPVC板に対して先端がかなり変形したが、プラズマ窒化した突起物では変形が起こらず、平均面圧を312kPaとしても、突起物先端の変形はなかった。転造ロール試験でも、PE板に円形の穴を転造できるが、ロールの圧下力を大きくすると、穴の前後にスクラッチ痕がつく。 つぎに、スパッタエッチングのままのSKH51突起物(寸法が1ミクロンメータ以下)およびSiC薄膜をスパッタコーティングした突起物にウレタン樹脂を塗布して硬化させ、ピール試験により型離れ改善効果を調べた。その結果、SiC薄膜をコーティングすると、ピール力が半分以下に低下し、型離れ性が大きく向上することが分かった。
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