研究実績の概要 |
従来の超音波探傷法は,金属材料内部のmm以上のき裂状欠陥を対象としており,き裂発生に先行する異質部・劣化部・損傷部を非破壊的に可視化することができない. 本研究では,水浸非線形超音波(高調波)画像化法を用いて,組成・物性が母材と極わずかだけ異なる異質部・劣化部・損傷部を非破壊的に可視化し,複数の超音波特徴量を用いてそれらを識別することを目的とする.周波数20-50MHz,2-3,あるいは数十のサイクルの大振幅正弦波バースト波を点集束探触子に送信し,材料内部からの散乱波に含まれる高調波成分をアナログハイパスフィルタにより抽出し,その振幅分布を可視化することにより異質部・劣化部・損傷部を非破壊的に検出し,平面図・断面図によりその位置を表示した.異質部として金属材料中に含まれる数十μm程度の非金属介在物,各種固相接合界面に存在する偏析,酸化物などを,劣化部として金属材料中の塑性変形域,損傷部としてガラス板に導入した数十ナノメートルの隙間間隔を持つ熱疲労き裂を対象とした. 延性材料の劣化は塑性変形を伴うことが多いので,厚さ方向の共振周波数を持つバースト波を入射し,その高調波振幅を可視化することにより,疲労き裂先端部塑性域,引張負荷の増大に伴う塑性域の拡大,部分除荷時の荷重レベルによる高調波振幅(可動転位密度)の差を可視化できた.酸化物分散強化フェライト鋼燃料被覆管(厚さ0.5mm)内部に存在する15x5ミクロン程度の酸化物を可視化できた.隙間幅数十ナノメートルのガラス板内熱疲労き裂,異種材料固相接合拡散接合界面の偏析も可視化できた.断面図における散乱波の深さ方向分布形態から,隙間を持つ界面と隙間のない異質部を区別できることが分かった.
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