研究課題/領域番号 |
24560120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山県工業技術センター |
研究代表者 |
佐山 利彦 富山県工業技術センター, 機械電子研究所 電子技術課, 主幹研究員 (40416128)
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研究分担者 |
釣谷 浩之 富山県工業技術センター, 機械電子研究所 機械システム課, 主任研究員 (70416147)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 信頼性設計 / エレクトロニクス実装 / マイクロ接合部 / X線マイクロCT / 放射光 / ヘルスモニタリング / 熱疲労 / 寿命評価 |
研究概要 |
実際の基板に用いられているマイクロ接合部に特化した、総合的、継続的な非破壊モニタリング、余寿命診断を可能にする新しい概念の信頼性評価技術の開発を行った。この信頼性評価技術の実現のため、放射光X線マイクロCTを応用した二つの要素技術の開発を進めた。(1)デジタル体積相関法による3Dひずみ分布の可視化技術。(2)ラミノグラフィーを応用した非破壊観察技術。 1.研究内容・成果 (1)放射光X線マイクロCTを用いて、同一のマイクロ接合部において負荷状態の異なる2つの状態を撮影した画像から、変位ベクトルの粗探索を行った結果、Ag3Sn相等の特徴点周辺では、ひずみ分布可視化の見通しが得られた。 (2)ラミノグラフィー技術の開発によって、平板状の基板内のマイクロ接合部を非破壊で観察することが可能となった。得られたラミノグラフィー画像からき裂表面積などの定量的な指標の計測が可能となった。これにより現実の基板においてヘルスモニタリングや余寿命評価などの信頼性評価が可能となる。 2.有用性・意義 エレクトロニクス実装においては、マイクロ接合部の信頼性を評価する技術の開発が急務である。はんだ接合部の寿命をそのひずみ振幅から推定する方法が知られているが、ひずみを実測することが困難なため、主に、数値シミュレーションなどの解析による評価が行われている。放射光X線マイクロCTを用いて非破壊観察した画像から、デジタル体積相関法によるひずみ分布の可視化を実現することで、ヘルスモニタリングに適用可能な全く新しい信頼性評価技術を確立することができる。また、ラミノグラフィーを用いた観察手法の実現により、非破壊信頼性評価技術を現実の電子基板へ適用することが可能となる。開発した手法は、電子機器産業界のニーズにタイムリーに応えるものであり、将来、関連企業製品の高度化、信頼性向上に大きく貢献することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デジタル体積相関法によるひずみ分布の可視化については、変位ベクトルの粗探索に留まっており、ひずみ分布可視化アルゴリズムの開発が完了していないため、予定よりもやや遅れが出ている。しかし、ラミノグラフィー技術の開発を前倒しで実施しており、き裂やボイドの表面積が計測可能な画質が得られて、定量的な評価が可能となっている。このため、研究全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次の3点における推進を考えている。 (1)デジタル体積相関法による、ひずみ分布の可視化アルゴリズムを完成させる。フリップチップやFBGA(Fine pitch Ball Grid Array)などの同一のマイクロ接合部における、負荷状態の異なる複数種類の撮影データが得られているので、このデータを用いてひずみ分布の可視化アルゴリズムを完成させる。 (2)マイクロ接合部における熱疲労損傷過程を解明する。実基板のマイクロ接合部、特に鉛フリーはんだ(Sn-Ag-Cu系)接合部における熱疲労損傷の過程について、同一試料内の組織、ひずみ分布、および疲労き裂の変化を、総合的、継続的に非破壊観察し、その機構について定量的な解明を行う。 (3)ラミノグラフィー技術について、適用可能な対象や範囲を明確にするために、追加の実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
計算機等の画像処理システムの増強を、今年度については当初の予算よりも低い金額で行うことができた。次年度使用額については、デジタル体積相関法によるひずみ可視化技術および、ラミノグラフィー技術の開発のための実験を追加で行うため、大型放射光施設SPring-8での実験費用、旅費、実験資材の調達に使用する。また、画像処理システムについてもさらに増強する予定である。他に、国内外の学会、会議において研究成果発表を行うため、参加費や旅費に使用する。
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