研究課題
実際の電子基板におけるマイクロ接合部を対象とし、放射光X線マイクロCTを用いて、同一の接合部を継続的に非破壊モニタリングすることによって、その接合部の余寿命を診断する新しい概念の信頼性評価技術の実現を目的としている。最終年度は、放射光X線マイクロCTを応用した要素技術についての実証的研究、すなわち (1)「デジタル体積相関法による3Dひずみ分布の可視化技術」の可能性評価、(2)「放射光X線ラミノグラフィによる非破壊観察技術」の実基板への適用、を実施した。1. 研究内容・成果 (1)放射光X線マイクロCTを用いて、同一のマイクロ接合部において負荷状態の異なる2つの状態を撮影した画像から、ひずみ分布の計測を行った。その結果、Ag3Sn相などの微細な金属組織が見られる場所や、異なる材質同士の境界付近のような画像に特徴的なパターンが表れる場所では、非破壊による3次元のひずみ分布の計測が可能であるという成果が得られた。 (2)ラミノグラフィ技術の開発によって、平板状の基板内のマイクロ接合部を完全に非破壊で観察することが可能となった。パワーモジュールの典型的な接合構造であるダイアタッチ接合部を対象とし、放射光X線ラミノグラフィにより、はんだ接合部における疲労き裂の3次元的な進展過程を非破壊で可視化することに成功した。2. 有用性・意義 エレクトロニクス業界ではパワーモジュールをはじめとして、電子機器の各種デバイスの接合部における信頼性評価技術に対するニーズは非常に高い。本モニタリング技術の開発により、これまで産業用CTでは不可能であった電子基板の完全な非破壊での、疲労き裂やひずみの継続観察、評価が可能となったことの工学的意義は非常に大きい。開発した手法は、まさに電子機器業界のニーズにタイムリーに応えるものであり、将来、関連企業製品の高度化、信頼性向上に大きく貢献することが期待できる。
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SPring-8利用研究成果集(電子ジャーナル)
巻: 4 ページ: 未定