研究課題/領域番号 |
24560123
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
谷 貴幸 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80279554)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放電加工 / 微細加工 / 多角形穴加工 / 亜鉛合金 |
研究概要 |
初年度は,実験の基盤となるタンデム型微細放電加工機を製作した。本加工機には,微細軸成形と成形した微細軸による微細穴加工に対応できるように2つの電源を搭載する必要がある。単独の電源により行った予備実験により,比較的長いパルスの条件において,成形プレートがほとんど消耗せずに,亜鉛合金の微細軸が成形されることが明らかとなった。このことから,軸成形側はトランジスタ放電回路とした。一方の微細穴加工側は短パルス放電が有効であり,容易に短パルス放電が実現するRC回路とした。電極に対して成形プレート側,穴加工側がともに陽極の場合において,良好な加工特性を示したことから,電極を両電源のグランドとして回路を構成した。主軸の制御は,比較回路を通して両電源における極間電圧の小さい方の値を制御信号として取り出し,これを基準電圧と比較した。これによって,軸成形,穴加工のいずれかの加工において短絡が発生しても電極の回避が可能となった。 構成した加工機によって同時加工を実施した。あらかじめ多角形形状の穴形状を付与した成形プレートに円揺動を与える縮小機構を用いて,多角形形状の電極を機上で成形することが可能であった。なお,円揺動を与ることによって極間において常に解放空間となる部分が生じ,これが順次移動するため,加工屑が効率的に排出され加工は極めて安定した。この結果,電極成形においてジャンプ動作は不要となり,全体として加工効率を向上できた。さらに,機上で成形されながら繰り出された電極によって,そのまま薄板プレートに微細穴加工が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,研究に用いる装置の製作とその動作確認が主体であった。これまで自作した放電加工機により,絶縁性セラミックスの放電加工法やスリット間隙を自動追跡させながら微細軸を成形する方法を提案してきた。自作するメリットとしては,市販の加工機には無い制御を自由に組み込める点にある。研究の基盤となる装置の製作においてこのような経験があり,この装置作りのノウハウを活用したことで順調に研究が進んだと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
制作したタンデム型放電加工機による微細加工を引き続き実行し,その加工特性を詳細に検討する。電極製作においては,パルス幅の長い条件において,成形プレートが消耗しない結果となった。ただし,パルス幅が長い条件では,放電痕が大きくなり,表面の粗さも増加する。再現性や面精度を考慮すると,ある程度パルス幅の短い条件の選択が必要となる。プレートの消耗と面精度は,基本的にはトレードオフの関係になるので当面は100μm程度の軸の成形を想定して,実用的な放電条件を模索する。これまで,四角形,六角形の形状は可能としている。これらの形状に加え,各種形状への適用も検討する。 上記の検討を踏まえて,連続的な微細穴加工を実施する。多数穴の加工を目標とするため,加工はすべて自動化する方向で検討する。まずは,一つの穴加工において貫通状態を判断する。加工物の下部にダミーワークを設置し,ここに流れる放電電流によって貫通を判断する。放電電流は,カンター回路によって計測し,任意の放電数に達した時点で,自動的に次の穴加工へと移行するプログラムを組み込む。この場合,ノイズによって誤作動を生じる可能性があるので,状況に応じて検出する放電数,フィルターの付与,プルアップ回路によるパルス抽出を検討する。 さらなる微細化の検討として,電極材料を変更し,その材料に適応した電気条件を検討する。この際の微細形状の計測には機上での画像処理を検討する。また,電気条件からのアプローチとして抵抗体成形プレートの適用を試みる。形成プレートを抵抗体とすれば,これが充電抵抗に相当し,極限まで浮遊容量を減らせる可能性がある。プレート材料にはドープ量を変化させたシリコン,グラファイト,SiCの適用を検討し,その効果を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に購入を予定していた2軸の自動ステージシステムをフィードバック制御が可能な1軸のステージに変更したことと微細軸の観察用レンズを別予算で購入したため,次年度使用額が生じた。装置の制御は,制御支援用のソフトによって実施しており,PC性能の向上によって,各種の動作を安定させる必要がある。また,軸直径の機上計測の一つとして画像処理を検討している。次年度使用金額により新たに制御用のPCおよび画像処理ソフトを購入する予定である。 翌年度請求分では,実験上の再現性を高めるための治具の改良,回路の改良のために各種機械,電気部品および電極,成形プレート,被加工物に用いる材料などを購入する予定である。また,微細加工の動向調査,成果の発表として旅費,投稿料を使用する予定である。
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