本研究は,多角形形状の微細穴を連続的に加工する放電加工法の確立を目的としている。電極となる微細軸の成形を機上にて実行し,そのまま穴加工へと移行する加工システムであり,電極の傾き,位置決め等における誤差の排除が可能である。電極の成形加工と微細穴加工とを同時に実行するために,2つの電源構成を持つ加工機の製作が必要となる。予備実験として,穴加工と電極成形とをそれぞれ単独の電源により行った結果,プレート側の極性をプラスとしたトランジスタ回路を選択することによって,成形プレートがほとんど消耗せずに,高速に亜鉛合金の微細軸が成形されることを確認した。一方の微細穴加工は,電極をマイナス極としたRC回路において,電極の消耗を抑えることが可能となった。これらの電源構成によって同時加工を実行するために,電極を両電源のグランドとしてそれぞれの回路を構成した。主軸の制御は,比較回路を通して両電源における極間電圧の小さい方の値を制御信号として取り出し,これを基準電圧と比較する制御プログラムとした。また,連続的な穴加工に対応できるように,貫通穴判定機能を付加した。非常に短いパルス幅の信号を取り出すため,電子回路とPCによるプログラムとを併用したシステムを構成した。 構成した加工機によって同時加工を実施した。あらかじめ多角形形状の穴形状を付与した成形プレートに円揺動を与える縮小機構を用いて,多角形形状の電極を機上で縮小成形した。なお,円揺動を与えることによって極間において常に解放空間となる部分が生じ,これが順次移動するため,加工屑が効率的に排出され加工は極めて安定した。この結果,電極成形においてジャンプ動作は不要となり,全体として加工効率を向上できた。さらに,貫通穴の検出によって連続穴加工の自動化が達成され,四角形,六角形などの多数個の微細穴放電加工が実現した。
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