研究課題/領域番号 |
24560126
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
池庄司 敏孝 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40302939)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炭素系複合材料 / ニッケル基超合金 / ろう付 / 熱膨張係数 |
研究概要 |
1000℃を超える耐熱用途に炭素繊維強化複合材料(C/C材)は有望な材料であるが,本研究ではC/C材と耐熱超合金であるNi基超合金を直接接合し,かつ,十分な機械的強度を有する接合体を得ることで,C/C材の用途の拡大に資することを目的としている.C/C材とNi基超合金は熱膨張係数(CTE)の差が大きいため直接接合が難しい.本研究では,まず,1000℃超の高温に耐える接合体を得るため,(I)Cr-Fe-Ni系合金によるろう材を開発する.また,CTE差による残中熱応力を緩和するために(II)応力緩和層を挿入して接合を試みる. 「研究実施計画」では平成24年度は(I)のCr-Fe-Ni系合金の作製を行う予定であったが,まず,試みとしてステンレス鋼ろう付け用のCr-Fe-Ni-(Si,B)ろう材,TB-2720(Fe-20Cr-42Ni-10(Si,B))を試用した.Inconel-600/TB-2720/C/C材の組合せでは接合されたが,継手強度は極めて低かった.これは接合体のC/C材中でき裂が生じたためである.これはInconel-600とC/C材のCTE差が大きく,また,TB-2720の凝固部が比較的剛性が高いため,残留熱応力によりC/C材内部に亀裂が生じたと考えられた. そこで,(II)の応力緩和層としてNb箔を挿入し,Inconel-600/TB-2720/Nb箔/TB-2720/C/C材の組合せで接合を行った.その結果,Nb箔の厚さが100μmでは極めて低い継手強度だったが,200μmでせん断強度20MPaと極大となり,30μm以上では10MPa程度の低下した.接合部断面組織の観察,元素分布分析を行った結果,Nb箔はいずれの箔厚さでも程度溶解していたことが解った.また,Nb箔の溶解により接合部組織の様相が異なることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実施計画」では,まず,1000℃超の高温に耐える接合体を得るため,(I)Cr-Fe-Ni系合金によるろう材を開発し,また,CTE差による残中熱応力を緩和するために(II)応力緩和層を挿入して接合を試みるとあるが,平成24年度は順番を入れ替え,(II)を先に行った.これは,参考になるCr-Fe-Ni系ろう材が市販され始めたため,C/C材/Ni基超合金の継手がCr-Fe-Ni系を用いて形成できるか試みることを優先したためである. (II)の応力緩和層挿入による接合の試みに関しては(1)当初の計画以上に進展している.Nb箔を厚さを変えて挿入することにより,Inconel-600/TB-2720/Nb箔/TB-2720/C/C材の組合せで強固な接合継手を得ることができ,Cr-Fe-Ni系の合金系を選択したことが間違いではなかったことが示された.また,接合部組織の観察と元素分布解析から,これまでに指摘されていなかった金属組織が形成されていたことから,ろう材開発の知見が得られた.また,当初,平成25年度に行う予定であったので,計画より早く進展している. (I)のろう材開発は(4)遅れている.これは,Cr-Fe-Ni系合金を調合して作成する段階が始まっていないためである.しかし,(II)を先に行うことにより,応力緩和層であるNb箔との反応性を考慮する必要があるとの知見が得られたことから,当初の計画のようにC/C材とのぬれ性のみを考慮して試みた場合よりも将来,適切な組成が得られる可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
「研究実施計画」では,まず,(I)Cr-Fe-Ni系合金によるろう材を開発し,また,(II)応力緩和層を挿入して接合を試みると2段階の計画としてあったが,平成24年度は順番を入れ替え,(II)を先に行った.本年度以降は専攻した(II)応力緩和層の挿入による継手形成の研究を行いつつ,(I)Cr-Fe-Ni系合金によるろう材の開発を並行して行う. (II)応力緩和層の挿入による継手形成の研究では,本年度は,Nb箔挿入による接合部金属微細組織の解析を第一に行う.昨年度の研究により,Nb箔がC/C材側でのみ溶解し,かつ,従来指摘されていなかった複雑な凝固組織を示したため,これらの形成状況を明らかにする.具体的には,接合条件(温度,時間)を変化させて形成された組織を解析する. (I)Cr-Fe-Ni系合金によるろう材開発は,当初の計画通り,48at%Cr-52at%Ni共晶を基にして,Si,Bを添加して融点を下げる方向で合金作成を行う.前年度の結果から,Feの挙動が凝固に影響を及ぼすようなので,Feを除外するかも検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画では (I)Cr-Fe-Ni系合金によるろう材を開発し,また,(II)応力緩和層を挿入して接合を試みると,並行して研究を行う. (I)Cr-Fe-Ni系合金によるろう材の開発では,ろう材の出発材料は既に昨年購入してある.試作合金の融点を測定するための示唆熱分析試料セル(白金セル)を昨年に続き購入する.白金価格の高騰により昨年は十分な数が購入できなかったため,必要分を追加購入する.また,試作した合金を紛体化するための依頼費を引き続き計上する. (II)応力緩和層の挿入による接合では,C/C材とInconel-600を購入する.また,昨年度の研究成果をLOET2013で発表するための出張費を計上している.
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