近年,通信デバイスや医療機器などの小型化に伴い,高い精度と強度に対する高い信頼性を持つ微小な金属部品が求められている.金属部品を塑性加工(成形)すると,外形の加工のみならず,内部の強化も行えるために,マイクロ・メゾ(マクロとマイクロの中間,0.1~1mm)スケール部品の精度と信頼性を追求できる.しかし,成形中は常に材料と工具が接触しているために,それらの間の摩擦状態が塑性変形へ与える影響が大きい.特に,マイクロ・メゾスケールの部品では,表面積が体積に占める比率が高いために,摩擦の不均一が材料の塑性流動に強い影響を及ぼし,内部組織の不均一を引き起こす. 本課題で提案する摩擦力直接測定法は,鍛造タイプの成形中に平面工具に加わる力を,工具に設けた微小な領域の薄肉部に設置した2つの鏡に当てて反射したレーザの変位から,垂直成分と水平(摩擦方向の)成分に分離するものである.校正試験用に製作した2軸プレス装置を用いて,垂直力と摩擦力が同時にかかる時の測定体の校正を行った結果,1つの鏡によるレーザの変位情報のみでも垂直力と摩擦力の分離が行える可能性が示唆された. また,製作した工具表面用の接触電位差測定装置を用いて,マイクロ・メゾスケールの押出し据込み加工後の工具表面の凝着量を測定し,材料の初期状態(受入れ材,焼鈍材)と加工速度によって,接触電位差の分布に明確な違いを検出できることを示した. 成形中の直接測定で得られる局所的な摩擦力の情報と,工具表面の凝着の定量結果を比較することは,不均一で加工中に変化していく摩擦を扱うことが不可欠なマイクロ・メゾ成形の界面のモデル化につながると考えられる.
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