研究課題/領域番号 |
24560134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
畑中 伸夫 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (70413846)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 絞り加工 / 摩擦攪拌接合 / 展開ブランク |
研究概要 |
1.使用材料に関する検討: 申請時,使用材料として軟質純アルミニウム板A1050-Oの使用を予定していたが,FSW接合に使用するためには,「軟質」すぎるため再検討を行い,同等な成形性を有するアルミニウム合金板A5052-O材を使用することとした.また,FSW接合特性を検討するために,板厚は当初の1mmに加え2mmでも実施した. 2.回転ツール形状および材質の検討: 回転ツールの形状は,計画では,ショルダー径10㎜,ピンの直径2㎜,長さはダイス面との干渉を避けるために板厚より少し短く0.9㎜を基本として検討することとしていた.実験的に検討する中で,ショルダー径12mm,ピン径4mm(M4右ねじ),ピン長さは板厚に合わせ,0.9mm,1.9mmが本実験においては最適であることが確認された.ツールに使用した工具材料は,研究計画時と同じ工具用合金鋼SKD61である. 3.回転ツールの回転速度と接合速度: 摩擦攪拌接合においては、回転ツールの回転数と接合速度により、接合部への入熱量が決定される。回転数が高くなると入熱量は増加し、接合速度(送り速度)が速くなると入熱量は減少する。アルミニウム合金の直線接合の場合、先行する研究により広い範囲で種々の実験が行われているが、回転数500~3000rpm、接合速度150~1000㎜/minで良好な接合が実現されている。本研究の結果,板厚1mmおよび2mmの場合ともに,回転数500~2500rpm,送り速度100~1500m/minの範囲で良好な接合強度が得られた.本研究の目的である,分割フランジ部の摩擦攪拌接合において予想される接合速度においても摩擦攪拌接合が可能であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ツール形状:研究・実験を進める中で,適切な形状を得ることができた.早い段階で,適切な形状を決定できたことから,無用な実験を繰り返すことがなかった.材質については計画通りの材料を使用している. 2.回転ツールの回転数と接合速度:従来摩擦攪拌接合が可能とされていた範囲およびその範囲を若干上回る範囲で接合が可能であることを明らかにした.これによって,本研究全体の目的である展開ブランクを用いた気密性を有する深い容器の製作に必要な基本技術が明らかにできた. 3.展開ブランクの絞り加工過程における材料の変形:本テーマに関しては,実験装置の設計・製作をすでに済ませている.実験的に諸特性を明らかにするのはH25年度の課題であり,準備を有効に遂行した.
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今後の研究の推進方策 |
1.ブランク形状と点Cの位置:角筒用の展開ブランクにおいて、フランジ部の材料は、加工の進行に伴って順次パンチ側へ移動し、点Cで隣接するフランジと接触する。そして、絞り変形を受けつつダイス穴内に流入する。しかし、点Cの位置は不動ではなく、加工の進行に伴ってパンチコーナ向きに移動することが、定性的に明らかにされているが詳細な検討はなされていない.突合せ接合を行うためには、被接合材料が接触していることが必要であり、絞り加工に伴う点Cの移動を各種加工条件のもとで、明らかにする必要がある。今後の研究の重点の一つである.研究計画の段階では明示的に記述しなかったが,材料流動について,有限要素法シミュレーションによる解析の可能性を検討する. 2.回転ツール最適位置の決定:前項で、加工の進行に伴って、隣接するフランジが接触する点Cが移動することを記述した。摩擦攪拌接合は、接触している材料の間に回転ツールを回転させながら挿入し、材料を攪拌・塑性流動することにより接合する。材料間の隙間は、継手間隙またはギャップと呼ばれており、存在しないことが原則である。これを実現するために、回転ツールは、移動後の点Cよりもダイスコーナ側に配置する必要がある。一方、材料は移動後の点Cで隣接するフランジと接触後、絞り変形を受けつつ、ダイス穴内に流入する。そのため、摩擦攪拌は、絞り変形を受けている材料内で行われることになり、ピン部には大きなせん断荷重およびねじり荷重が作用する。安定して隙間を生じず、そして、過大な圧縮応力の作用しない加工点を明らかにする必要がある。また、工具材料の再検討が必要となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額107,064円は,物品費に充て,他の旅費および人件費・謝金,その他について変更はない. 次年度使用額が生じた理由については,本年度に製作した実験装置による実験結果を詳細に観察を行った結果に基づいて,実験装置の改善を実施すべきと実験および予算執行に慎重な判断を行ったことから生じたものである. 次年度の研究費費目別内訳中,物品費については主として実験装置の改造に充当する.旅費は,日本塑性加工学会春季講演会(3泊4日・愛知県),軽金属学会秋季講演会(2泊3日・神奈川県)への参加旅費に充当する.その他については,実験材料および実験に必要な消耗品等に充当する.
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