研究課題/領域番号 |
24560138
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
本村 文孝 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40274625)
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キーワード | レーザスクライブ / 強化ガラス / 表面き裂 / 接着層 / ミスト冷却 / 有限要素法 / 破壊靱性値 |
研究概要 |
貼り合わせた化学強化ガラスにレーザスクライブ加工によるスクライブ線(以後、表面き裂)を生成する際の加工条件を設定するために、有限要素プログラミングに破壊力学を適用した数値シミュレーションの有効性を踏まえて、H25年度は前年度までにおこなった吸着ステージを用いた変位拘束条件に変えて、ガラス端部まで線状に接着された接着領域に挟まれたスクライブ予定線上をレーザ熱源と冷却源が移動するレーザスクライブ実験および数値シミュレーションの比較検討をおこなった。また接着強度および接着領域(部分的な線状の接着を含む)の非対称性が表面き裂の進展および表面き裂深さにどのような影響を及ぼすのかについても比較検討をおこなった。 板厚0.5㎜の強化ガラスにおける変位拘束力が大きくなる程、表面き裂進展に必要な加工条件の適用範囲が狭まることが確認された。この傾向は高い変位拘束力を付加されたガラスは変位拘束の無いガラスの板厚に比較して、板厚の増したガラスと見做すことができ、変位拘束を板厚の影響と置き換えることの有効性を示唆するものといえる。貼り合わせ条件が空間的に変化するモデルに対して加工条件を設定する場合には、予め板厚に対して得られる最適な加工条件を数値解析による求めることで、効率的に加工条件を設定できると考える。また非対称性が表面き裂進展に及ぼす影響として、直進性の低下が考えられたが、本実験では確認されず、スクライブ方向への接着領域の長さと位置の影響が、表面き裂の生成に影響が大きく、接着領域に応じたスクライブ条件の補正が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザスクライブ加工条件の設定に必要な主な情報として、1)材料および熱物性(縦弾性係数、残留応力分布、線膨張係数、熱拡散率など)、2)破壊クライテリア(引張破壊応力、破壊靱性値、ひずみ点温度など)、3)変位または応力拘束条件(接着強度、接着長さなど)が与えられれば、レーザスクライブの加工条件(レーザ熱源および冷却源の距離、レーザ強度、加工速度等)を効率的に見積もることができるシステムの構築に一定の目途がついた。但し、スクライブ線(表面き裂)の安定した生成(進展)には、上記の3)における接着領域のわずかな非対称性に強く影響を受け、再現性の高い加工条件の設定には至っていない。スクライブ加工中におけるいくつかの加工条件の変更、例えば、接着領域に応じたレーザ熱源と冷熱源の距離の最適化の必要性が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
レーザスクライブ加工が貼り合わせ強化ガラスの加工法として有望と考えるが、実用化における課題として、1)初期傷の生成方法の確立、2)強化ガラスの残留応力分布の定量評価、3)接着性能の定量評価が挙げられる。1)については、ホイールカッタ等による接触式の代替法として、超短パルスレーザを用いたレーザアブレーションによる表面除去加工法が挙げられる。H24年度の海外研究にて得られたガラスに対するレーザアブレーション加工の数値シミュレーションのプログラミングスキルを生かして、ガラスのマイクロドリルを応用したマイクロクラックの生成が適用可能と考える。2)3)についは、ガラスメーカおよび接着剤メーカの情報提供に頼るところが大きく、改善の余地がある。
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