自動車や航空機に用いられる高Siアルミニウム合金などの量産加工にはCVDダイヤモンド膜を被覆した切削工具が使用されている。現在市販されている当該工具の表面粗さは1μm程度であるが、切削性能を向上させるためにはより平滑なダイヤモンド被覆膜表面を得ることが望まれている。本研究では、エンドミルやドリルなどの複雑形状を有するダイヤモンド被覆工具等の表面性状を向上させるための方策として、導電性ダイヤモンド膜を電解仕上げする方法を提案した。 電解加工仕上げを可能とするため、CVD合成中にホウ素をドーピングし導電性を付与したCVDダ イヤモンド膜およびダイヤモンド焼結体(PCD)をダイヤモンド工具素材に選定した。電解加工条件と加工性能の関係を調べた結果、Rz=2~3μmの凹凸のダイヤモンド表面がRz=0.1μm以下の平滑面に加工できること、電流密度を高くすると加工能率が増大することが分かった。 平成26年度までに、導電性CVDダイヤモンド膜への電解仕上げが可能であったことより、導電性を有するダイヤモンド粒子を原料とする導電性PCDへの電解を試みた。その結果、導電性PCDのコバルトバインダ部が選択的に除去されることなく、ダイヤモンド粒子表面の凹凸が平滑化されることを明らかにした。また、加工能率をより向上させるためパルス電流印加法、超音波加振電極法、高圧電解液供給法を適用し、加工性能の向上効果を調べた。
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