研究課題/領域番号 |
24560141
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
小川 圭二 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (80405232)
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研究分担者 |
中川 平三郎 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (50033345)
田邉 裕貴 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (00275174)
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キーワード | レーザ / 焼入れ / 高精度 |
研究概要 |
本研究課題では,複雑形状を有する極小刃物に対して均一な高硬度分布と刃先形状を高精度かつ低環境負荷で実現するプロセスを実現することを研究の目的としている.平成25年度は研究実施計画通り,本研究課題で提案しているレーザ焼入れ後刃形創製法の有効性検証試験を実施した.まずは刃先稜線が直線状の刃物を対象とし,従来の刃形創製後レーザ焼入れ法と比較した.その結果,良好に焼入れされた刃先が得られるレーザ照射条件は,刃形創製後レーザ焼入れ法の場合と同様に,送り速度が速いほど,高いレーザ出力を必要とするが,同じレーザ出力でも遅い送り速度に良好な条件が存在することを明らかにした.また,レーザ焼入れ後刃形創製法を用いることで,刃形創製後レーザ焼入れ法では適用不可であった工作物表面が溶融してしまう条件も含めて,より広いレーザ照射条件範囲からの刃形創製が可能であることを実証した.なお,レーザ焼入れ後に刃形を創製する場合,刃先の硬化層分布を制御するためには,あらかじめ硬化層の形状を把握しておく必要があるが,送り速度が遅くレーザ出力が高い場合ほど,硬化幅と硬化深さがともに大きくなることを明らかにし,データベース化した.本データベースを用いることで,実際に刃形を創製するときに,必要に応じたレーザ照射条件を容易に決定できるようになった.実際に製作した刃物の刃先先端半径は10 μm以下と非常に鋭利で,最大硬さ800 HVと十分な硬さの硬化層を有しており,刃先の形状精度と硬さを両立した極小刃物が製作できた.刃形創製後レーザ焼入れ法では不可能であった刃先からの距離0.2 mm程度と極先端付近のみに硬化層を有する刃物の製作もできた.さらに,刃先創製予定位置に対してレーザ照射位置をずらして焼入れすることで,最終的に刃先に形成される硬化層の分布を制御することにも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,複雑形状を有する極小刃物に対して均一な高硬度分布と刃先形状を高精度かつ低環境負荷で実現するプロセスを実現することを最終目的としている.平成25年度は,本研究課題で提案しているレーザ焼入れ後刃形創製法の有効性の実証することを目的としていたが,まず第一歩として直線形状刃物を対象にして,レーザ照射条件の観点と実際に製作した刃物の形状精度と硬さの観点から,提案手法の優位性を実証することができ,当初の目的を達成できたため.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,平成26年度も実施計画通りに研究を推進する.具体的には,本研究課題で提案しているレーザ焼入れ後刃形創製法の有効性について,曲線形状を含む複雑形状を対象に検証試験を実施する.また,機上レーザ熱処理システムの環境負荷の定量評価も行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった.平成25年度は直線形状の刃物のみを対象にしたため,刃物間隔を狭くすることができた.できるだけ一つの試料で多くの条件を検討することで効率よく鋼材を使用することで,試料の節約ができたためである. 次年度は曲線形状を含む複雑形状の刃物の評価も実施するため多くの試料が必要になる.翌年度分として請求した助成金合わせて計画的に執行していく.
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