本研究課題では,複雑形状を有する極小刃物に対して均一な高硬度分布と刃先形状を高精度かつ低環境負荷で実現するプロセスを実現することを目的としている.平成26年度は,前年度に引き続き,本研究課題で提案したレーザ焼入れ後刃形創製法の効果について検証試験を実施した.前年度実施した直線形状極小刃物を対象としたレーザ焼入れ性と刃形創製後の刃先形状および硬化領域に関する研究成果について,刃先稜線形状が直線-円弧-直線からなる曲線形状極小刃物を対象に,本工法の適応性について検討を行った.その結果,レーザ焼入れ後刃形創製法を用いれば,曲線状極小刃物の場合でも,能率を低下させることなく,刃先の高形状精度と高硬度を両立した曲線形状極小刃物が創製できた.具体的には,円弧部の半径が1mmと小さい場合でも,刃先先端半径は5μm以下と非常に鋭利で,硬さは500HV以上の硬化領域が深さ0.15mm程度の曲線形状極小刃物の製作に成功した.また,スマートフォンや携帯タブレット等の画面保護シートに用いられる機能性フィルムに対して,レーザ焼入れ後刃形創製法で製作した刃物の切断性能評価試験を実施した.その結果,刃形創製後レーザ焼入れ法とほぼ同程度の切断品質が確保できていることを確認した.さらに,レーザ焼入れによる環境負荷低減効果を評価するためにライフサイクルアセスメントを行い,炉焼入れの場合と比較した.その結果,生産個数にもよるが,レーザ導入により非常に高い環境負荷低減効果が見込めることが示された.
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