研究実績の概要 |
少子高齢化を迎えたわが国においては,高齢疾患である変形性関節障害による人工股関節置換数が増加している.特にわが国ではⅡ型患者(臼蓋形成不全と加齢が原因で発症)が多く,臼蓋形成不全のまま人工骨を挿入すると応力不均衡が起こるため,自家骨等でこれを補う必要があった.自家骨補給では健全部から骨を確保しなければならず,同種骨から補給すると感染リスクがあるため,患部個々の形状に即した臼蓋形成部品(人工臼蓋形成部品)が必要とされている.本研究では患部のモニタリング技術を生かし,骨誘導性に優れた患者個々のサイズ・形状に合った臼蓋形成部品を作成することにより,長期安定型股関節の供給を目指す事を目的としている.本年度は最終年度に当たり,従来あるハイドロキシアパタイトの付与は同部材が剥離する危険性が高いためこれを使用せず,チタン合金製インプラントの表面に3Dハニカム構造とDLC被膜を採用することにより,その効果をビーグル犬を用いたインビボ試験により骨伝導能を検証した.この結果,従来の16週要していた骨の誘導を,約3週間程度の埋没で充填が終了するなど優れた効果をもたらした.また母材表面にDLC被膜は,この表面に存在するダングリングボンドを活用(OH終端処理)することにより3Dハニカム構造による皮質骨の空洞部への骨伝導すなわち骨占拠率プラス皮質骨と人工インプラントとの接触率を向上させる効果が増加することも明らかとした.
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