研究課題/領域番号 |
24560149
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
和田 任弘 奈良工業高等専門学校, 機械学科, 教授 (10141912)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 切削 / PVDコーティング / タングステン系被膜 / 被膜特性 |
研究概要 |
近年、被膜の開発は、従来のTi系被膜から、Cr系被膜の開発に重点がおかれている。これは、Cr系被膜は、高硬度、高酸化温度という優れた被膜特性を有しているため、高温下でも安定して高硬度を維持することができるためである。しかしながら、Cr系被膜は耐密着性にやや劣る。 そこで、研究代表者は、超硬合金母材の主成分であるWCに着目し、Cr系被膜にWを加えることで密着力を高めることが可能であると考え、Cr系ターゲットにタングステン(W)を加えた合金をターゲットに使用した新しいタイプの(Cr、W、Al)系被膜を開発し、この被膜が高密着性・高アブレシブ性に優れた被膜であることを明らかにすることを目的とする。 今年度は、Cr系ターゲットにタングステン(W)を加えた合金をターゲットに使用した新しいタイプの(Cr、W、Al)系膜に着目し、(Cr、W、Al)合金ターゲットを試作した。なお、試作ターゲットは、(Cr、W、Al)の成分割合が異なる2種類のターゲットである。さらに、この2種類のターゲットを使用し、超硬合金K10種を母材とし、窒化系、炭化系、窒炭化系の被膜を形成させ、被膜特性を調べた。この結果、窒化系被膜は、硬さ3100HV0.025N以上の高硬度被膜が得られたが、密着強度は100Nであった。炭化系では、密着強度が130N以上で優れた密着性が得られた。しかし、被膜硬さは1700HV0.025N程度で、市販のTiN被膜と同程度であった。これらに対し、窒炭化系被膜を形成させた場合、硬さ3000HV0.025N以上の高硬度被膜が得られた、さらに密着強度も130Nであった。 以上のことから、(Cr、W、Al)(C、N)被膜が最も優れていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、超硬合金母材の主成分であるWCに着目し、Cr系被膜にWを加えることで密着力を高めることが可能であると考え、Cr系ターゲットにタングステン(W)を加えた合金をターゲットに使用した新しいタイプの(Cr、W、Al)系被膜を開発し、この被膜が高密着性・高アブレシブ性に優れた被膜であることを明らかにすることである。 超硬合金K10種を母材とする場合、市販のTiN被膜では密着強度68N、被膜硬さ2090HV0.025N、また(Ti,Al)N被膜では密着強度73N、被膜硬さ3500HV0.025Nである。これらに対し、超硬合金K10種を母材とし、(Cr、W、Al)合金をターゲットに用い、窒化系、炭化系、窒炭化系の被膜を形成させた場合、いずれの被膜も、密着強度が100N以上であり、高密着性に優れた被膜であることが明らかである。なお、これらの被膜が高アブレシブ性に優れた被膜であることは、次年度以降に明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、(Cr、W、Al)系被膜を試作し、この被膜特性を調べた結果、高密着性の被膜であることを明らかにした。しかし、これらの被膜が高アブレシブ性に優れた被膜であることについては、明らかにされていない。さらに、高硬度材の切削加工においては、被膜硬度の上昇が必要な要件である。 以上のことから、今後の研究の推進方策として、 ①試作した(Cr、W、Al)系被膜の耐アブレシブ性を調べるために、切削実験を行い、工具摩耗を調べる。 ②試作した(Cr、W、Al)系被膜の硬度を上昇させるための方策として、シリコン(Si)を加えた、(Cr、W、Al、Si)系被膜を試作し、この被膜特性を明らかにする。 ③試作した(Cr、W、Al、Si)系被膜の耐アブレシブ性を調べるために、切削実験を行い、工具摩耗を調べる。 ④被膜形成時に母材に加える負のバイアス電圧は、被膜特性に大きな影響を及ぼす。そこで、このことについては再度、検討する必要があるため、今までの研究を通じて得られた最適被膜について、バイアス電圧を変化させた被膜を形成させ、バイアス電圧が被膜特性に及ぼす影響を調べる。 ⑤適用範囲を広げるために、バイト以外の切削工具、すなわち金型鋼の切削によく用いられるエンドミルにも適用し、従来から市販されている(Ti、Al)Nコ-テッド工具との比較・検討を行う。 ⑥今後の研究を発展させるために、研究結果の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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