ナノ精度加工と同時に所望の表面機能を付与するナノ表面改質加工技術を用いて,“バイオ用マイクロデバイス”を創製することを目的として研究を実行している.本年度は,加工条件(印加電圧,加工速度等)をパラメトリックに調整することにより,ステンレス鋼やCo-Cr合金に対して仕上げ改質加工を実施する際に,生成する被膜厚み・構造をどこまで制御可能かを検証した.加工した表面機能の評価には,昨年度に構築した摩擦摩耗/細胞培養複合試験システムを用いた.一方,医療用微細デバイスの幅広いアプリケーションに対応するため,上記の研削加工法と相補的に作用するダイヤモンド工具によるマイクロミーリング加工,さらにレーザーによる高効率加工にも継続的に取り組んだ.極微粒ダイヤモンド(平均粒径1μm以下)焼結体で構成される多結晶ダイヤモンド工具,および新たに開発されたバインダレス多結晶ダイヤモンドからなる微細エンドミルを用いて,超精密切削加工を行う際の加工プロセスを支配する要素と仕上げ加工面の挙動の関連を解析した.とくに,ガラス製バイオチップの金型となる炭化珪素(SiC)製マイクロ流路形状を製作するための基礎となる加工条件の最適化および達成度レベルの検証を実施した.さらに,本研究期間内に導入したナノパルスファイバーレーザを用いた新しい表面改質手法の開発に取り組んだ.すなわち,レーザ照射により与えられる熱を利用して,金属イオンを含有した溶液中に浸漬させた被処理材(オーステナイト系ステンレス鋼基材)の表面を局所的に加熱することにより,溶液中の金属イオン成分を含んだ合金層を形成させるという試みである.濃度1%のAl(NO3)3溶液に浸漬させたSUS316L試験片に対し,本手法を処理することで,溶液中のAl成分が試験片表面に効率よく拡散するという基礎的知見を得ている.
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