研究課題/領域番号 |
24560156
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
北條 春夫 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (40108238)
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キーワード | はすば歯車 / ギヤポンプ / 損失要因 / 圧力差 / 機械損失 / 排気口 |
研究概要 |
周速の高い歯車は,歯車周囲の空気を巻き込むための損失(風損)が無視できないが,歯車箱内を減圧するとこれを回避できる.この減圧を歯車の持つ自己ポンプ作用で行うことを考え,はすば歯車を対象として実験を行ってきた.本年度は,減圧量の把握に加えて,損失量も計測できるように実験設備を変更した.運転にはサーボモータを用い,無潤滑で歯車を運転している.また当初は,被動側歯車に負荷装置とトルクメータを取り付けて運転したが,事実上負荷がゼロであるので,被動軸端を開放して,駆動軸トルクを計測することにより,実際の損失測定を行った. 実験ではおおむね-0.08MPa(ゲージ圧)までの減圧ができることが,再現性を含めて確かめられた.またこれと同時に,減圧をすると損失が増すという現象を確認した.また,外部のポンプで減圧したり,外気を導入して内部圧力を調整した場合の損失も計測した結果,損失には,機械的な摩擦による損失,風損による損失,内外圧力差を維持する損失があって,これらの総和が歯車装置の損失となることを実験的に明らかにすることができた. また,排気口の位置を,ギヤポンプと同様に,歯車外周のかみ合い外れの位置に大きく設けると,その空間に存在する空気を撹拌するための損失も加わることが判明した.すなわち,自己ポンプ作用を最大限に活用するには,排気口の位置を歯車の側面に置くことも重要であることが判明した. 本年度の実験を通じて,自己ポンプ作用のみで歯車箱内の減圧をするのは,損失低減の観点からは必ずしも適切でなく,小型の真空ポンプでアシストすることにより全損失が効果的に低減できそうであると考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度には,損失測定は計画通りに実施できた.このときに,研究本来の目的であるところの歯車箱内の減圧と損失の関連性を精査した.その際に損失の分類が明確にできることが判明したため,その寄与を詳しく検討した.結果として損失を低減しつつ風損低減を行うためには,自己ポンプ作用自身が持つ損失を回避しなければならないことが判明したため,実験量が増えた.また,実験自身が発熱を伴うことから,実験ごとの冷却に時間がかかり,当初目論見よりは実験の所要時間の短縮ができなかった. しかしながら,明らかにしたい挙動は概ね理解ができるようになったと考える.
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今後の研究の推進方策 |
25年度未達の実験として,ねじれ角を増した場合の挙動の解明があるが,極低圧下における潤滑方法の検討に重点を置くことが本研究の目的にかなっていると考えるので,この部分に注力しつつ,ねじれ角の影響も検討を加えることにしたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
主な理由は,人件費を使用しなかったことにある.大学院学生の研究活動を指導の一環として実施したためである. 実験を遂行するために,潤滑機器類とセンサー類を購入することと,歯車の更新(表面処理)の必要があるため,これらに当てて使用する予定である.
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