研究課題
本研究は,非円形歯車の運転の高性能化,高速化を目的としており,非円形歯車の運転性能を明らかにする.非円形歯車は高速回転領域では,振動や軸トルクの変動が大きくなり,運転性能が悪化する.これらの挙動の詳細な把握のために,平成24年度の研究で使用した2種類の楕円歯車の研究をさらに進め,楕円歯車の運転性能について,理論的,実験的に明らかにした.また,楕円歯車以外の非円形歯車の設計・製作についても検討を行った.平成24年度と同様,動力吸収式試験機を用いて,楕円歯車の円周方向振動加速度,歯元応力,騒音および軸トルクを測定した.円周方向振動加速度は,歯車本体に取り付けた2個の加速度ピックアップにより測定した.楕円歯車ではかみあう歯対の位置によって加わる荷重が異なるため,歯元応力の測定においては,楕円歯車の円周方向90°ごとの4枚の歯にひずみゲージを貼って歯元応力を測定し,それらの応力を比較することにより歯面動荷重や,振動による歯面分離の挙動を求めた.測定した楕円歯車の振動加速度,騒音および軸トルク変動の解析には,平成24年度に設備備品として購入した4ch FFTアナライザを用いて行い,FFTアナライザにより,振動加速度の実効値を算出するとともに,振動加速度,騒音,軸トルクの周波数分析を行って振動を実験的に把握した.さらに楕円歯車の振動シミュレーションプログラムに改良を加え,歯車円周方向振動加速度,動荷重,軸トルク変動の計算精度を高めるとともに,楕円歯車のかみあい特性や性能を,数値計算により理論的に把握した.シミュレーション結果より,非円形歯車(楕円歯車)の高性能化・高速化に必要な振動を低減する方法についても検討した.
3: やや遅れている
非円形歯車の運転の高性能化,高速化を目的として非円形歯車の運転性能を明らかにするため,平成25年度も,前年度と同様,2種類の楕円歯車I,IIに対する研究をさらに進め,円周方向振動加速度,歯元応力,騒音,軸トルク変動を測定し,楕円歯車の運転性能の考察を行った.また,振動シミュレーションプログラムの改良を行って計算精度の向上を試み,楕円歯車の振動加速度,動荷重,軸トルク変動の計算結果を考察し,以下の成果を得た.(1)楕円歯車は回転速度を上昇させると,回転速度変動が大きくなって歯面分離や非かみあい側歯面の衝突が生じて振動が著しく大きくなる.負荷トルクを大きくすると歯面分離や非かみあい側歯面の衝突が生じる回転速度は高くなる.楕円歯車の被動軸は角速比曲線に対応した回転速度変動が生じ,駆動軸も被動軸の回転速度変動による慣性力の影響を受けて回転速度変動を生じる.(2)歯車の円周方向振動加速度は,楕円一葉歯車よりも楕円二葉歯車のほうが大きくなる.また,楕円一葉歯車は離心率が大きいほうが円周方向振動加速度は大きくなる.さらに,負荷トルクが大きいほど歯面分離や非かみあい側歯面の衝突が生じる回転速度は高くなるが,それによって生じる振動加速度の大きさには違いはみられない.(3)改良したねじり振動シミュレーションプログラムによる計算により,非かみあい側歯面どうしの衝突によって生じるトルク変動,回転速度変動,振動加速度の波形の変化を,おおむねシミュレートできているといえるが,まだ完全ではない.以上,楕円歯車の研究については,ほぼ順調に進展していると考えているが,楕円歯車の振動シミュレーションがまだ完全ではなく,この楕円歯車の性能の考察から楕円歯車以外の非円形歯車の設計方針を決定するために,楕円歯車以外の非円形歯車に対する研究は,当初の計画から遅れ気味であるといわざるを得ない.
平成25年度に引き続いて楕円歯車,そして楕円歯車以外の非円形歯車について設計・製作を検討し,これらの歯車について理論的,実験的研究を行い,実験的研究で得られた非円形歯車の運転試験結果と理論解析結果を比較考察するとともに,非円形歯車の高性能化(高速化)について検討を行う.さらに,最終年度であるので,平成24年度~26年度に実施した楕円歯車,および楕円歯車以外の非円形歯車の運転性能向上(高性能化,高速化)に関する研究の総合的評価と総括を行い,また,本研究により得られた結果を取りまとめて成果の発表を行う.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part C: Journal of Mechanical Engineering Science
巻: Volume 227 Issue 4 ページ: 819-830
10.1177/0954406212454372
Proceedings of International Conference on Gears Europe invites the World, October 7th to 9th, 2013, Technical University of Munich (TUM) Garching (near Munich), Germany
巻: VDI-Berichte 2199.2 ページ: 1505-1508