弾性流体潤滑(EHL)下での油膜挙動に関する研究を実施した。接触圧力分布測定法の開発に関して、当初の計画で目標とした高分解能での測定を可能にすることはできなかったが、研究全体としては進めることができ、有用な知見が得られた。 ・接触圧力分布測定法の開発 光学干渉層を用いる圧力測定について、膜厚などの条件を変えて精度確認実験を行なったが、現時点では十分な分解能による測定法を確立するまでには至っていない。今後はさらに研究を推進し、これまでに得られた知見を生かすことでさらなる改善を行ない、EHL油膜挙動の解明に寄与する高精度圧力分布計測法の確立を目指す。 ・表面に凹凸を有する試験片の作製 マスクを利用してクロムをスパッタリングすることにより、表面にサブミクロンの高さを持つ突起を有する試験片を製作し、赤外線温度分布に与える影響などについて実験を実施することができた。 ・赤外線温度分布測定 両接触表面とその間に形成された油膜の温度上昇を実験によって求めた。鋼球固定―円板運動の点接触条件下において、鋼球表面に単列あるいは複列の帯状突起が接触域内の入口付近から出口付近までの様々な位置にある場合について実験を実施しデータを得た。単列帯状突起が引き込み速度方向に対して直角方向に配置された場合には、最大油膜温度上昇は出口付近に突起が存在する場合に生じることが分かった。 ・グリースEHL実験 グリース潤滑下での油膜形成について実験を実施し、以下の知見を得た。油量不足がないときのグリース油膜厚さは基油を用いた場合の膜厚より厚くなる。油膜厚さの変動は増ちょう剤の分散が不十分な場合に大きい。増ちょう剤の分散が十分な場合、低速での油膜厚さは粘度などの基油性状よりも増ちょう剤の大きさに依存する。
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