研究課題/領域番号 |
24560162
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
樋口 勝 日本工業大学, 工学部, 准教授 (40293039)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 4足歩行ロボット / 機構設計 / 減速機 |
研究概要 |
1.脚機構の評価 従来提案されている多くの脚機構と本研究で提案する脚機構の特徴・性能の比較を行い,提案する機構が,水平面での移動効率に優れることと,階段や段差・不整地面において高い対地適応性を有することを定性的に明らかとした.また,提案した脚機構を設計するための定量的な評価方法として従来より提案されている評価指標である,移動仕事率,ZMP,安定余裕,最大動力,平均動力,最大トルク等を採用し,脚機構の評価を行った. また,階段の寸法と脚機構の関係を解析し,階段の寸法に対応できる脚機構の設計方法を提案した.そして,提案した手法と評価量を用いて,建築基準法に規定されている一般的な建物における階段の規格に対応できる本体重量30kgfの歩行ロボットの脚機構の設計を行った.脚機構は,階段昇降時の最低地上高を考慮して,300mm,450mmの長さを有する2本のアームからなる2リンクアームとし,全関節のモータをMaxonの200Wブラシレスモータを選定した. 2.減速機の開発 選定したMaxonのモータは小形・軽量であるが,定格回転数が16,000rpmとかなり高回転であることから,これに対応できる小形・軽量かつ高減速比の減速機が必要である.そのような減速機として,ウォーム減速機とボールネジを組み合わせた,ボールウォーム減速機を提案し,その基本特性を把握するための実験装置の設計を行った.実験装置は一定の入力を与えるためのサーボモータ,負荷としてのヒステリシスブレーキ,入出力角変位とトルクを測定するためのロータリエンコーダとトルクセンサ(Kubotaトルクデューサ),ウォームとウォームホイールの接触力を測定するための6軸力センサ,ボールの運動を計測するための3つのレーザ変位計と動画カメラから構成され,ボールの動きが見えるように,ボールを循環させるためのケースの一部にアクリル製の窓を設けた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.脚機構の評価:新たな歩行モード切替に対応する評価指標を提案することができていない.これは,歩行モードが切り替わると歩行特性が非常に大きく変化するため,一つの指標でそれらを包括して評価することが困難であった.特に歩行面がどのような歩行面であるかによって評価値が非常に大きく変化してしまい,一つの明確な評価量を決めることが困難になっている. 2.減速機の提案:減速機そのものの提案は出来たが,それを製作する方法が見つかっていない.色々な歯車業者・機械加工業者に相談しているが現状として,そのような形状を製作することができていない. 3.脚機構の設計:25年度の計画には含まれている,階段の寸法に対応できる脚機構の設計方法を確立することができた.また,具体的な階段の寸法を設定して脚機構の設計を行った. 4.足部機構の提案:25年度の計画には含まれている,安定性を確保すると同時に,受動車輪による移動を行うことが可能な足部機構を提案し,設計を行った. 5.関節機構の設計:25年度の計画には含まれている,関節機構の設計を行った.360°回転できるだけでなく,当初予定していなかった,ロボットの運搬整備性を高めるための容易に取り外ができる機構を提案した.
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今後の研究の推進方策 |
25年度計画に含まれている,脚機構の設計,足部機構の提案,関節機構の設計の一部を24年度に行うことができたが,24年度に行う予定であった,評価量の提案と,減速機の開発が途中である.減速機の開発については,減速機の加工が困難であることから,その開発を中断することとし,ハーモニックドライブ減速機を用いた関節機構を用いることに変更する.ハーモニックドライブだけでは減速比が不足することから,これと組み合わせる減速機について検討する.ロボットの整備性・運搬性を向上させるために提案した分解・組立が容易な関節機構に対応できるように,関節の中心にケーブルを通せる機構になるように工夫する.現状としては,遊星歯車機構と,1段の平歯車列,タイミングベルト,傘歯車,ハイポイドギヤを候補として考えている.また,この代替え案の設計と同時に,提案したウォームボール減速機の加工方法についての検討を継続していく. 減速機と平行して,本年度は試作機の製作を行い,提案した機構の評価と問題点の把握を行う.まず,ミニチュアロボットの製作を行い,ロボット全体としての運動・機能の確認と問題点の把握を行う.それと同時に実寸大のロボットの脚機構の設計を行い,脚1本での性能評価と問題点の把握を行う. さらに,24年度から継続して,歩行ロボットの評価方法について検討し,歩行路面と歩行モードの変化に対応できる,汎用的な評価指標の提案を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,提案した減速機の基本特性を把握するための実験装置を製作する予定であったが,提案した減速機を製作することが困難であったために,実験装置の製作に言ったっていない.そのために実験装置を製作するための費用を繰り越している. 平成25年度は,ミニチュア歩行ロボットおよび実寸大の脚機構の試験機の製作を行うため,その製作費(材料費,機械要素購入費,アクチュエータ購入費,制御系購入費)を予定している.実寸大の試験機の関節用の減速機は提案した減速機が製作困難なためハーモニックドライブ減速機にもう一段減速機を組み合わせたものを製作・使用することにするが,ハーモニックドライブは高価であり,もう一段減速機を組み合わせるために,その試作も必要となる.繰り越した費用はこの減速機試作機および本製作費用に充てる. ハーモニックドライブ減速機以外には,モータとしてMaxon製のEC4Poleー40(200W)とそのドライバー(モータドライバ),関節機構の材料費(ジュラルミン2024あるいは7075),リンクの材料(CFRPパイプ,CFRP板),足部機構用のラジコンサーボモータ,受動車輪,軸受,ボルト・ナット等の機械要素,ミニチュア用のサーボモータ(ラジコンサーボ),実験装置制御・計測用のコンピュータ,アルマイト処理装置等を予定している.また,調査研究および昨年度の成果発表のための旅費も予定している.
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