研究課題/領域番号 |
24560162
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
樋口 勝 日本工業大学, 工学部, 准教授 (40293039)
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キーワード | 機構設計 / 歩行ロボット / 足部機構 / 歩行安定性 / 最適設計 |
研究概要 |
1.関節機構の開発 本研究で提案する脚機構はモード切替するため,その各関節には広い可動範囲が要求される.リンク同士の干渉が無い広い可動範囲を有する脚機構を実現するために,片持ち構造でありながら高剛性の関節機構の設計・試作を行った.具体的には関節の外形とほぼ等しい直径を有するクロスローラベアリングと,モーメント荷重を適切に分配するモノコックフレーム構造の採用した.更に,ロボットの運用性を高める為に,高剛性かつガタの無い分解組立可能な関節機構として,カムによる締結機構と,六角ボルトを参考にしたジョイント結合機構を提案し,設計・試作を行った. 2.足部機構の設計 安定性と静粛性そして,高効率な移動を可能とする足部機構として,歩行面の形状に受動的に対応するアクチュエータ不要の足部機構を提案し,その実験機を製作し,実験により提案した機構の有効性を確認した. 3.歩行運動の設計および脚機構の設計・製作 提案する機構は3つの歩行モードを有し,それぞれの歩行モードにおいて最適な形状が異なる.そこで,機構に作用する負荷が最も厳しい歩行モード(おもに大きな凹凸のある歩行面や階段歩行に対応する歩行モード)を優先し(重みを大きくし),対象とする歩行面形状での安定した歩行を可能とすることを拘束条件とし,機構寸法,モータに作用するトルクおよび動力を最小化する脚機構の設計を行った.この設計では機構寸法だけでなく,同時に歩行運動を作成しながら行った.そして,まず1脚のみの部品の詳細設計・製作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は小型実験機の設計・製作を行い,これを用いた実験結果を受けて大型機の設計を行い,1脚のみ製作して台上試験を行う予定であったが,小型機の設計・試作が遅れてしまった.これは,小形試作機をいくつか設計・製作したが,サーボモータの性能が低く,当初の予定通りの性能を実現できていないためである.そのため,大型機の設計に必要なデータを得ることができていない.そこで,サーボモータおよび制御用コンピュータの見直しをする必要が生じ,これに伴い,ロボット全体の設計の見直しが必要となってしまった.現在,問題を修正した小型機の設計が終了している. 大型機については,小型機の実験結果を待たずに設計できる関節部分の設計を先に進めた.しかし,軽量・高剛性かつ,組立・分解が容易な関節機構の設計は予想以上に困難さを極め,また,当初多く使用する予定であったCFRP素材が,加工業者が見つからず,それほど使用できなかったために,大幅な設計変更が必要となってしまった. 以上のことより,小型実験機および大型実験機の製作が遅れている.しかし,設計そのものはどちらも概ね終了しており,大型機は小型機の実験結果を待って,リンクの寸法およびモータ・減速機の選定をすることで,設計は終了する.
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今後の研究の推進方策 |
まず,遅れている小型機の製作を行う.当初はマイコン制御を考えていたが,ノートPCで制御し,小型で安価なサーボモータではなく,高速通信が可能な大型で高性能なサーボモータを使用する.部品の製作は自前のCNC工作機械をフル稼働させて,時間のかかる外部発注を行わずに製作することで,時間の短縮をはかる.そして,実験を行い,大型機でまだ設計が終了していない部分のデータを収集する. この実験の結果を受け,大型機の設計・製作を行う.まずは,昨年度中に,1脚のみ製作して台上試験を行う予定であったので,1脚のみの製作を行う.最初の脚は多くの実験をこなす必要があるために,多少重くなるが信頼性の高いハーモニックドライブ製のモータと減速機が一体となったアクチュエータを使用する.この台上試験により,実物大での脚の問題点を把握し,それを修正した設計を行い,大型機を製作し,実験を行う.まず,各歩行モードでの歩行特性を把握し,路面に適した歩行モードを特定する.さらに,本歩行ロボットでは歩行モード間の遷移を安定に行うことが重要となるので,歩行モードだけでなく地形も考慮した最適な歩行モードの遷移を行うモーションを作成する. これらの基本的な実験が終了した後に,実際のフィールドとして,本学のキャンパスのあらゆる場所に持ち出して,歩行試験を行いロボットの性能を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
設計した機構がが予想した以上に複雑になってしまい,部品形状が複雑であり,また,部品点数も大幅に増えてしまった.また,カーボン素材については加工できる業者がすくなく,その発注先を探すために時間が必要となった.そのため,製作に必要な費用が多かったために,設計の見直しを繰り返すこととなり,小型機・大型機ともに設計が大幅に遅れてしまい,部品製作の発注が遅れてしまった. まず,小型機の部品製作用の材料および工具を購入する.また,制御用のノートPCおよび通信速度の速い高性能なサーボモータを購入する. その後,大型機を製作するが,まず,一脚だけ製作し,台上試験を行う.そのための信頼性の高い減速機とACサーボモータがユニットになったロータリアクチュエータを購入する.この1脚のみの台上試験の結果により,大型機全体の製作を行う.そのための,部品の製作および減速機・モータ,制御用PC(歩行ロボットに搭載可能なノートPC)を購入する.なお,部品の製作は精度や製作の難易度に応じて外部に製作発注するものと,自前の工作機械を用いて自作するものとに分け,自作するものについては,そのための材料及び工具を購入する.この他に,電子部品(コネクタ・コード)および台上試験用の安定化電源,大型機・小型機用のバッテリーを購入する.
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