研究課題/領域番号 |
24560168
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
三原 雄司 東京都市大学, 工学部, 教授 (20287858)
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キーワード | 薄膜 / センサー / トライボロジー / 流体潤滑 / 圧力計測 / 計測技術 |
研究概要 |
本年度はしゅう動部へのセンサの形成において、RFマグネトロンスパッタリング装置による絶縁膜の形成方法に加え、窒素イオン注入法+RFマグネトロン法及びALD法による超薄型薄膜センサの実現に向けて再検討を進めた。この結果、窒素イオン注入法では金属のテストピースの表面を高い絶縁抵抗を有する表面へ改質することが難しい可能性があったため、実現の可能性が高いALD法による成膜手法の確立を目指した。成膜温度は250~300℃程度がALDによるアルミナ膜の推奨温度とされるが、本研究で対象とするしゅう動部は軟質で低融点の金属も含まれる場合も想定されるため、成膜時の基盤温度は120~300℃まで変化させて成膜特性の確認を進めた。また、極薄膜でのピンホールフリー化と高い付着強度を得るために、基盤表面のプラズマエッチングの強度を0Wから800Wまで変化させ、その効果を比較した。この結果、基盤温度は120℃程度でも、100W以上のプラズマエッチングを適正時間行うことでピンホールフリーの絶縁膜を安定して形成することができ、膜厚さを0.6μm程度にすることができた。これよりセンサの総膜厚さは2.0μm程度で製作でき、従来の薄膜圧力センサとの比較では約60%膜厚さを減らすことに成功した。この成膜法を用いて薄膜圧力センサを製作し、基本的な出力特性を調べた結果、圧力センサ材料が持つ一般的な圧力感度及び温度感度の特性を得ることができた。インダクタンス式の薄膜ギャップセンサの開発は、基本形状の策定のためにRFマグネトロンスパッタリング装置で開発を進めた。基本形状は外形がφ5mmで幅33μmの薄膜を6重にした渦巻き型で、総膜厚は約10μmとした。直径5mmで長さが5mm程度の形状を持つ巻き線型のギャップセンサ(市販品)の出力と比較した結果、出力は2/3程度小さいが、今回の実験に必要な出力が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に主に行う予定であった距離センサの開発に関しては、従来型のスパッタリング法を用いてインダクタンスの変化を原理とする薄膜ギャップセンサの開発を進めたが、距離を計測できる出力特性を有するための最適化を進め、形状や膜構成や膜材料の工夫により、距離を計測できる十分な距離変化-電圧変化の出力を得ることができた。また、このセンサを極薄化するために必要な超薄(0.6~1.0μm)の絶縁膜に関しては、前述したALD法によって予定していた膜厚の最薄の厚さである0.6μmで絶縁を確保することに成功した。このALD法による絶縁膜を用いて圧力センサの形成も進めたが、圧力センサ材料の持つ固有値である圧力感度を示した。薄膜ギャップセンサの製作工程が若干複雑なため、歩留まりの向上策を検討中ではあるものの、概ね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成24年度及び25年度に開発を進めた薄膜圧力センサ及び薄膜ギャップセンサを応用して、油膜張力計測の実験を進める。即ち、開発した薄膜センサの特性の再確認、特に、圧力計測においては圧力以外の影響による出力が無いことを確認し、距離計測に関しては温度によるドリフトなどが往復動試験装置の実働中に発生しないか確認を行う。往復動試験機用の試験片にこれらのセンサを取り付け、荷重、速度、潤滑油の種類、潤滑油温度、給油量を変えて、条件の違いによる油膜の状態を計測する。特に2面間の相対的な滑り方向と、すべり面の相対的な拡大方向の速度パラメータの組み合わせ、これらの速度としゅう動時の荷重パターンを変えることで、油膜張力の正圧力から負圧・油膜張力から油膜破断となる遷移を観察し、その発生形態を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
イオン注入による実験を予定していたが、ALD法を重点的に行ったため、この実験に関連する機器使用料が少なくなったことが最大の理由である。 平成26年度には実験装置部品に成膜を行うため、ALD装置で必要となる成膜材料の購入に主に使用する。
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