研究課題/領域番号 |
24560169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松本 將 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40367173)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 摩擦係数 / 転がり・すべり接触面 / 混合潤滑 / 表面粗さ形状 / 境界潤滑部分割合 |
研究概要 |
平成24年度の目的「混合潤滑状態にある接触領域の境界潤滑部分の割合の解明」に対し、2項目の実験と理論検証を実施した。 ①「実加工面の静荷重負荷による表面粗さ変化確認」では、実際の表面粗さ形状の負荷による塑性変形状態を実測し、表面粗さ接触領域(真実接触面積)が2面間の油膜厚さによって変化して行く状態を弾塑性接触計算できるようにした。表面粗さに実測値を用いた評価はこれまでになく、潤滑状態D(表面粗さ/弾性流体潤滑最小油膜厚さ)が約20以下の状態では、境界潤滑部分の割合αがほぼα=0.5logDとなることが確認できた。また、本計算手法を2円筒線接触状態で表面粗さ形状を変えて摩擦係数確認実験、摩擦係数値が解析で求めた結果とほぼ一致することも確認した。 ②「回転すべりおよび転がり・すべり状態の摩擦係数確認」では、表面粗さ形状を変化させて実験を行った。Ra(算術平均粗さ)とRz(最大高さ粗さ)の比を0.07~0.20に変えた。実験の結果、摩擦係数はRa/Rz比と無関係で、Rzのみで決まることが分かった。実測した摩擦係数から逆算した境界潤滑部分の割合αは0.5logDになることも明らかになった。また、転動面に溝や大きなうねりを与えて数個の突起を形成した場合も、突起部の高さを接触領域内の最大高さとしてDを求めれば、α=logDの式を用いることができることがわかった。すなわち、摩擦係数を支配しているのは接触領域内の最大高さRzであり、Raではないことがわかった。 本結果は、従来転動面設計で曖昧であった混合潤滑状態の評価と摩擦係数の推定を定量的に行えることを明らかにしたもので、転がり・すべり接触面を有する歯車や転がり軸受の設計に精度の良い摩擦係数推定値を取り入れることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な狙いは、接触領域内混合潤滑状態分布と摩擦係数の関係を明らかにすることであるが、初年度の実験確認にて、接触領域内の最大高さ粗さが摩擦係数を支配していることが判明した。このことを実験的に明らかにできたのは世界で初めてである。この結果から、潤滑状態分布の影響は少ない可能性があり、次年度に接触面の潤滑状態分布を大きくつけて実験を実施し、摩擦係数推定式の精度向上を図って行く。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で摩擦係数推定氏の影響因子の目途がついたので、次年度も予定通りの推進としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は「転がり・すべり接触面の接触領域内の潤滑状態分布を考慮した摩擦係数推定手法の検討」を行う。前年度研究にて、接触面内の潤滑油膜形成状態がほぼ一様である線接触面内の最も過酷な潤滑状態(2面の最大高さ粗さ/弾性流体潤滑最小油膜厚さ)のみで混合潤滑下の摩擦係数を推定できる可能性が把握された。25年度は、接触面内の潤滑油膜形成状態が大きく異なる場合についての摩擦係数推定手法を検討する。具体的には、前年度使用した試験機を用いて、3次元接触となる転がり・すべり接触面として①点接触(球と円筒)および②線接触片当り(2円筒片当り)についての摩擦係数を測定する。3次元接触の場合は、接触面内の潤滑状態に形状に依存した分布が存在する。摩擦係数が、弾性流体潤滑油膜厚さ分布の計算値をもとにした局所摩擦係数の積分値になるか、あるいは前年度確認したような最も油膜厚さが薄い部分の摩擦係数に支配されるかを解明し、3次元接触の場合の摩擦係数推定式をまとめる。 上記研究作業への支出費用は、予定通りの見込みである。
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