平成25年度の実施テーマ「接触領域内の潤滑状態分布を考慮した摩擦係数評価手法」に関し、球面と平面の混合潤滑状態での摩擦係数予測を実施し、線接触で得られた摩擦係数評価式を点接触にも使用できることを明らかにした。線接触では同時接触領域の中での油膜厚さは同じであるが、点接触の場合は分布が存在する。球と円筒の弾性流体潤滑解析を行い、油膜厚さと油膜圧力(荷重)の分布を求めた。接触領域中の離散化した格子点毎に既開発式を用いて混合潤滑状態の摩擦係数を求め、接触領域全体の面積分値を求め、法線力で除して摩擦係数とした。検討の結果、分布を基にした摩擦係数と、最小油膜厚さを基にした摩擦係数はほぼ一致し、分布を検討しなくても最小油膜厚さの検討のみで摩擦係数が推定できることがわかった。この理由として、混合潤滑状態では、表面粗さが油膜厚さの数倍~数10倍になり、点接触面内の数10%程度の油膜厚さの違いが無視できることがわかった。また、最小油膜部分は油膜圧力も大きく法線力の分担比率も大きいこともその理由とされた。この結果を踏まえ、平成26年度は摩擦係数の予測精度を向上させるために、流体潤滑摩擦係数と境界潤滑摩擦係数に及ぼす潤滑油種の影響を明らかにする。特に、従来の無添加鉱油に加え、自動車産業で使用されているATF(0.数%の硫黄Sや燐Pの添加した鉱油)と合成油であるトラクション油についての摩擦係数測定実験を行い、評価手法を完成させる。摩擦係数値は直接的には動力損失の値になり、トランスミッションなどの省エネ量の定量評価に使えることを示す。また、本研究では転がりすべり接触面の摩擦係数と表面損傷発生との関係を整理して、歯車等の機械要素設計に資する取りまとめを行う。
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