動力伝達用歯車の動力損失低減と歯面損傷防止のために、歯面の摩擦係数の推定精度を向上させる必要があり、混合潤滑状態にあるころがりーすべり接触面の摩擦係数推定式の構築に取り組んだ。その結果、接触領域内に潤滑状態分布がある場合にも、接触領域内の最小油膜厚さに着目して、新たに考案した摩擦係数推定式[f=(1-α)fL+αfS、α=0.5logD、ここでf:摩擦係数、fL:流体潤滑摩擦係数、fS:境界潤滑摩擦係数、α:接触領域内の境界潤滑部分の占める割合、D:最大高さ粗さと弾性流体潤滑最小油膜厚さの比)が適用できることが分かった。得られた結果は下記の通りである。 (1)球と平板の純すべり混合潤滑状態で実験を行い、弾性流体潤滑油膜厚さ分布の薄い部分が主に接触し、しゅう動痕形状が油膜厚さ分布とほぼ同様の形状(馬蹄形)を示すことが確認された。油膜厚さ分布があっても摩擦係数は最小油膜厚さ部分に着目して良い。(2)接触領域を細分し、各部分の潤滑状態を考慮した摩擦係数を求めて面積分した値と、接触領域の最小油膜厚さから求めた摩擦係数の値はほぼ同値で、油膜厚さ分布を考慮せずに最小油膜厚さを用いて摩擦係数を評価できる。(3)線接触片当たりで潤滑状態分布がある場合でも、接触領域を二円筒線接触として求めた最小油膜厚さを考慮すれば摩擦係数を推定することができる。(4)大きく歯形修正を施した歯面を有する歯車(歯面修正はすば歯車、コニカルギヤで検証)のかみ合い摩擦による動力損失も、提案の摩擦係数推定式を用いて求めた歯面の接触領域各部の摩擦仕事を積分することにより求めることができる。 なお、上記成果は歯車国際会議(於.フランス)で発表され、歯車トランスミッション技術開発で我が国と競合している欧州研究者による高い評価(The Best Paper Award)を受けた。
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