研究課題/領域番号 |
24560170
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
武藤 一夫 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (90530874)
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研究分担者 |
川島 貴弘 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50378270)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アコースティック・エミッション / デジタル検出 / カンチレバーアレイ / ピエゾ抵抗素子 / 集積化センサ / MEMS |
研究概要 |
本研究は,材料が外力によって変形あるいは破壊に至る際に発生する音(弾性波)であるアコースティック・エミッション(AE,音響放射)の周波数特性を,異なる共振周波数を有した複数のカンチレバーおよびその根元部に配置したピエゾ抵抗素子によって分解・検出可能とする「ディジタル検出方式AEセンサ」の開発を目標として実施した.得られた成果は以下のとおりである. (1)カンチレバーの共振周波数の理論式に基づき,応答する周波数帯域が100k~500kHz(50kHzステップ)となるように,カンチレバーの高さを20 μmとした場合のカンチレバーの長さを算出し,デバイスレイアウトの設計を行った.さらに,Siの深堀りエッチング(DRIE)を用いたMEMSプロセスによってカンチレバーアレイを試作し,共振周波数の評価を行った.その結果,実測されたカンチレバーの共振周波数は設計値に対して減少する結果となったが,カンチレバーの長さに応じて共振周波数が変化することを確認できたことからAEの周波数特性の検出がアレイ化したカンチレバーにて可能であることを示した. (2)共振するカンチレバーの変位を電気的に検出するためのピエゾ抵抗素子部を設計することを目的とし,シノプシス社Sentaurusを用いて不純物拡散シミュレーションを行った.P型Siの<110>方向にピエゾ抵抗素子を配置した際のB(ボロン)の不純物濃度が1~2×10^18 cm-3となるプロセス条件を決定するため,Bのイオン注入時の加速電圧,ドーズ量および不純物拡散のためのアニール温度,時間に関してシミュレーションを行い,カンチレバー部とピエゾ抵抗素子部を一体化するためのプロセス条件を決定した.得られた条件に基づき,作製プロセスを実施した結果,アレイ化したカンチレバーの根元部にピエゾ抵抗素子を集積化したAEセンサを実現可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,当初計画において,カンチレバーの共振周波数特性の評価およびピエゾ抵抗素子部について電気的な評価を行うことを計画した.カンチレバーの共振周波数については,DRIEを用いたMEMS技術によってカンチレバーアレイを試作し,共振周波数の評価を行った結果,カンチレバーの長さに応じた共振周波数の変化が得られた.また,励振周波数に対する各カンチレバーの変位をプロットした結果から,50kHzステップで設計したカンチレバー間でのクロストークは生じないことも確認できている.一例として,長さが292 μmのカンチレバーに対する共振周波数は216kHzとなり,このときのQ値は94となったことから,作製したカンチレバーは高いQ値を有していることも示した.しかしながら,カンチレバー形成時の両面アライメントの精度など,プロセスの最適化が必要であることがわかった.次に,共振するカンチレバーの変位を電気的に検出するためのピエゾ抵抗素子部の評価については,不純物拡散シミュレーションにより決定したプロセス条件に従って,アレイ化したカンチレバーとピエゾ素子を一体化したデバイスを実現した.しかしながら,同一基板上に配置したTEG(Test Element Group)領域に幅,長さを変えてデザインしたピエゾ抵抗素子部の電気抵抗値を測定したところ,ほぼ一定の値を示したことから,ピエゾ抵抗の形成プロセスにおいて不純物の拡散が十分に行われておらず,不純物拡散シミュレーションの再検討を含めたデバイス作製プロセスの最適化が必要であることがわかった.その結果として,当初計画したセンサの電気的特性の評価を実施するまでには至っておらず,平成25年度において引き続き,AEセンサの作製プロセスの最適化および評価を実施する計画である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では引き続き,カンチレバーのアレイ化およびピエゾ抵抗素子形成のための個々のプロセスを構造解析や不純物拡散のシミュレーションを行うことで最適化および試作を行い,平成24年度と同様にカンチレバーの共振周波数およびピエゾ抵抗素子部の電気的な評価を行い,一体化に向けた要素技術を確立する.ピエゾ抵抗素子の形成については,熱処理工程が不純物拡散に大きく影響を及ぼすため,要素技術の評価段階においては,一体化プロセスで必要となる熱処理工程を模擬的に実施し,電気的な評価も行うことで一体化のためのプロセス条件を決定する.試作したAE センサの基礎特性の評価としては,圧電素子をAE 信号の発生源とみなし,センサを圧電素子表面に張り付け,ファンクションジェネレータを用いて一定の周波数で振動させた際に,カンチレバー根元部に配置したピエゾ抵抗素子とのブリッジ回路により検出する電位変化から,共振しているカンチレバーを同定することによって,その応答特性を評価する計画である.一般的にAEは弾性波であるが,その発生源はセンサに対して様々な方向から入力される.そのため,一体化したAEセンサに対して,垂直方法や水平方向からの変位や振動を印加することで,種々の方向から伝わる振動に対して,作製したAEセンサが,どのような共振特性および検出感度を有するかの検証も行う.また,温度補償用カンチレバーの一体化を検討し,センサの温度変化がブリッジ回路から計測される出力電圧に及ぼす影響を調査し,センサの温度特性についての評価を行う計画である.これらの結果に基づき,カンチレバー部のデザイン設計および回路設計を含めた作製プロセスの最適化をさらに繰り返し,目標とする周波数範囲100kHz~1MHz,周波数分解能50kHz を実現するディジタル検出方式AE センサの実現を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費として,ディジタル検出方式AEセンサの作製に必要となるシリコンウェハ,フォトマスク,半導体プロセス用のガス・薬品類の購入を行うことを計画している. 旅費等については,平成25年度は,国内旅費として,豊橋技術科学大学にて研究打合せを行うための往復旅費(豊橋一泊二日 ×10回),成果発表(国内会議 ×1回)および本研究に関連するシンポジウム・研究会への参加(東京日帰り ×3回)を計画している.さらに,海外旅費(国際会議 ×1回)および学会誌への研究成果投稿料(×1回)を計画し,本研究課題でえられた成果を広く世に公開する.また,研究内容と研究成果を広く一般にも公開するために,ホームページの更新や研究成果広報用パンフレット作成を行うなどによって,その成果を発信することも計画している.
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