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2013 年度 実施状況報告書

ディジタル検出方式アコースチック・エミッション・センサの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24560170
研究機関豊橋技術科学大学

研究代表者

武藤 一夫  豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (90530874)

研究分担者 川島 貴弘  豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50378270)
キーワードアコースティック・エミッション / ディジタル検出 / カンチレバーアレイ / ピエゾ抵抗素子 / 集積化センサ / MEMS
研究概要

本研究は,材料が外力によって変形あるいは破壊に至る際に発生する音(弾性波)であるアコースティック・エミッション(AE,音響放射)の周波数特性をディジタル的に分解・検出可能とする「ディジタル検出方式AEセンサ」の開発を目標として実施した.本AEセンサは,機械共振器となる構造体として異なる共振周波数(長さにより制御)を有した複数のカンチレバーをシリコン基板上にアレイにて配置し,各カンチレバーの根元部にピエゾ抵抗素子を形成することで,振動の周波数に応じて共振するカンチレバーの変位を検出するものである.得られた成果は以下のとおりである.
(1)理論式に基づいたカンチレバーの設計・試作および不純物拡散シミュレーションによって決定した作製プロセス条件に基づき,アレイ化して複数の長さを有したカンチレバー部とピエゾ抵抗素子部を一体化したディジタル検出方式AEセンサの試作を行い,目標とするセンサを実現可能であることを示した.
(2)試作したAEセンサの電気的特性評価として,形成したピエゾ抵抗素子部の電気抵抗の測定を行った.しかしながら,抵抗値変化やTEG領域に形成したPN接合部での期待されるダイオード特性がえられなかったことから,ピエゾ抵抗素子が形成できていないことが分かった.そのため,作製プロセスの再検討を行い,n型Si基板上にp型ピエゾ抵抗素子部を形成することで,再度,電気的特性評価を行った.その結果,実測した抵抗値は,理論値と比較して約1/3の大きさとなったが,素子の形状に依存した抵抗変化がえられたことから,電気的検出部として有効なピエゾ抵抗素子の形成プロセスを実現した.また,試作したAEセンサにおいて不純物の拡散がシミュレーション結果より深い領域にまで及んでいる可能性が考えられることから,今後は不純物の拡散深さを考慮した作製プロセスの最適化が必要となることがわかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の当初計画においては,カンチレバーとピエゾ抵抗素子を一体化したディジタル検出方式AEセンサの試作および作製プロセスの最適化,試作したAEセンサを用いた基礎特性の評価を行うことを計画した.今年度,検討したカンチレバーおよびピエゾ抵抗素子の形成プロセスを実施することで,それらを一体化したAEセンサの試作を行った.さらに,静的ではあるが電気的特性の評価を行うなど基礎特性の評価を進めており,その中で作製プロセスにおける問題点を抽出し,不純物の拡散プロセスにおける拡散深さの最適化を検討してきた.その結果,AEセンサを実現する作製プロセスについては確立できたものと考えている.概ね当初の研究計画内容に沿って進行しているが,構成要素の基礎評価に留まっており,一体化したAEセンサとしての基礎特性の評価までを行えていない.そのため,次年度においても引き続き,更なるAEセンサの作製プロセスの試作・最適化を進めるとともに,AEセンサとしての周波数分解性能や検出感度などの評価を実施する必要がある.

今後の研究の推進方策

平成26年度では引き続き,作製プロセスの更なる最適化の検討を行うと共に,試作したAE センサの基礎特性の評価として,圧電素子をAE 信号の発生源とみなし,センサを圧電素子表面に張り付け,ファンクションジェネレータを用いて一定の周波数で振動させた際に,カンチレバー根元部に配置したピエゾ抵抗素子とのブリッジ回路により検出する電位変化から,共振しているカンチレバーを同定することによって,その応答特性を評価する計画である.一般的にAEは弾性波であるが,その発生源はセンサに対して様々な方向から入力される.そのため,一体化したAEセンサに対して,垂直方法や水平方向からの変位や振動を印加することで,種々の方向から伝わる振動に対して,作製したAEセンサが,どのような共振特性および検出感度を有するかの検証も行う.また,温度補償用カンチレバーの一体化を検討し,センサの温度変化がブリッジ回路から計測される出力電圧に及ぼす影響を調査し,センサの温度特性についての評価を行う計画である.以上から,目標とするディジタル検出方式AE センサの実現を目指す.また,その後の応用展開としては,工作機械における軸・軸受などの回転および摺動する箇所で発生するAE信号の検出を検討し,市販のAEセンサとの比較を含め,開発したAEセンサを用いた評価を行う計画である.

次年度の研究費の使用計画

研究の計画当初は,デバイス作製に必要な消耗品の購入を予定していたが,実際には,不純物拡散条件の検討など要素技術に関する評価が主となったことで,当初計画していた消耗品の購入を行わなかったため,次年度使用額が生じた.次年度はAEセンサの試作・評価に必要となる消耗品の購入を行う計画である.
消耗品費として,ディジタル検出方式AEセンサの作製に必要となるシリコンウェハ,フォトマスク,半導体プロセス用のガス・薬品類や基礎特性評価で使用する金属材料等の部材の購入を行うことを計画している.
旅費等については,平成26年度は,国内旅費として,豊橋技術科学大学にて研究打合せを行うための往復旅費(豊橋一泊二日 ×3回),成果発表(国内会議 ×1回)および本研究に関連するシンポジウム・研究会への参加(東京日帰り ×2回)を計画している.さらに,海外旅費(国際会議 ×1回)および学会誌への研究成果投稿料(×1回)を計画し,本研究課題でえられた成果を広く世に公開する.また,研究内容と研究成果を広く一般にも公開するために,ホームページの更新や研究成果広報用パンフレット作成を行うなどによって,その成果を発信することも計画している.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Fabrication and Characterization of Piezoresistive Cantilever Arrayfor Digital Sensing of Acoustic Emission2014

    • 著者名/発表者名
      T. Kawashima, K. Muto, T. Yamakami, M. Nagai, T. Shibata
    • 学会等名
      The 9th International Conference on MicroManufacturing (ICOMM 2014)
    • 発表場所
      Singapore
    • 年月日
      20140325-20140328
  • [学会発表] デジタル式アコースティックエミッションセンサの開発(第3報) ―ピエゾ抵抗素子一体型カンチレバーアレイの作製と電気的特性評価―2014

    • 著者名/発表者名
      川島貴弘,武藤一夫,山上貴広,永井萌土,柴田隆行
    • 学会等名
      2014年度精密工学会春季大会学術講演会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] Fabrication of piezoresistive cantilever array for sensing of acoustic emission in frequency domain2013

    • 著者名/発表者名
      T. Kawashima, K. Muto, K. Takahashi, M. Nagai, T. Shibata
    • 学会等名
      The 39th International Conference on Micro and Nano Engineering 2013 (MNE 2013)
    • 発表場所
      London, UK
    • 年月日
      20130916-20130919

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公開日: 2015-05-28  

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