液晶ディスプレイなどのガラス基板や半導体ウエハのサイズは,年々大きくなっている.これまでに超音波を利用した浮上および搬送が実現されているが,1次元であった.圧縮空気による浮上と超音波搬送の併用では端部でしか駆動できないため,大型化する被搬送物へ対応することが困難である.また,エネルギー効率が悪かった.本研究では,多相の空気流路から空気を吐出・吸引することで空気圧の進行波を発生させ,大面積の板状物体を搬送する方法を開発することを目的とする.本方式は,空気圧を直接制御するため,エネルギー効率が高いという特徴を持つ. 試作した搬送台は,直径約0.3mmの穴を20mm間隔であけた幅15mmの角パイプが48本並べられており,各相は独立に駆動できる.圧縮空気からベンチュリ効果を利用して真空を発生させることで負圧の空気も同時に使用できるようにした.そして,従来方式の電空レギュレータを用いて空気流量をオン・オフ制御した.被搬送物はアルミ板とした. 被搬送物がわずかに傾いた時に駆動力が発生することが明らかになっているので,傾きを発生させることができる空気流パターンを実験的に検討した.そして,被搬送物を連続的に送る場合には,その位置に応じて空気流パターンをずらした.反射式フォトインタラプタを用いて被搬送物位置を非接触で検出した.4相分の駆動を行った結果,連続的に加速できることを実験的に明らかにできた.また,逆向きの駆動力を与えるように空気流パターンをずらしたところ,制動するとともに逆向きの運動に切り替えることもできることを確認した.
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