研究概要 |
油潤滑・高速すべり条件下におけるPEEK複合材料ブロックと鍛鋼リング(SF540A)の焼付き挙動に及ぼす低温エアジェットによる強制冷却の影響を調べた.実験時,摩擦トルクの測定及びリング表面下1mmの位置でリング温度を連続的に測定し,焼付きへの進行過程をモニターした.また,潤滑油中の摩耗粒子数を連続的に測定し,焼付きへの進行過程をモニターした.いかなる条件下でも,リング温度が約100℃以内で一定になる場合には,安定した流体潤滑を維持し,100℃を超えて漸増する場合には焼付きに遷移した.本年度は,冷却面であるリング側面に同心円状の冷却溝(0~2本)を加工し,エアジェット冷却効果を更に向上させて実験を行い,比較検討を行った.実験条件は,エアジェット空気流量約50~300L/min,コンプレッサー圧力0.3~0.6MPa,冷風率100,75,50,25%である.その結果,以下の知見を得た. 1.リング試験片側面に溝加工を施すことで,溝加工のない場合に比較して摩擦係数や摩擦面温度を低下させることが可能であった.エアジェット冷却を併用した場合,1つのリング溝(幅60mm,深さ10mm)を有する試験片が最も冷却効果が高いことがわかった.併用しない場合,2本溝が最も効果的であった. 2.エアジェット冷却における冷風率(冷風率=冷却空気量/圧縮機空気量)の影響が大きく,50%が最も冷却効果が高く,摩擦面温度を低下させ焼付きへの進行を抑えることが可能であった. 3.混合潤滑から焼付きへの遷移過程でエアジェット冷却を施すと摩擦面温度を低下させ焼付きを回避することが可能であった.しかしながら,実験条件が過酷で発熱量が高い時には,回避できない場合があり,今後冷風率と発熱量の関係等を明らかにすることが必要である.
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