油潤滑,高速すべり条件下におけるPEEK複合材料ブロック(炭素繊維30wt.%充填,幅10x厚さ10x長さ80mm)と鍛鋼リング(SF540A,φ130x20(厚さ))の焼付き挙動や摩擦面温度低減効果に及ぼすエアジェット冷却の影響を調べた。実験条件は,すべり速度10.2,15,19m/s,荷重1177N(一定)で,リング表面粗さ0.188±0.33μRa,PEEK樹脂表面粗さ0.195±0.35μRaである。潤滑様式は滴下潤滑で供給量は65cc/minである。コンプレッサー空気流量は約170L/min,コンプレッサー圧力0.6MPa,冷風率50%(冷風率=冷却空気量/コンプレッサー空気量)である。 高すべり速度下においては,リング温度が100℃を超えて増加し続ける場合に焼付きに遷移した。リングを強制的に冷却し,リング温度を100℃以下に保つことにより焼付きを回避できると考えられる。それゆえ,今年度は,エアジェット冷却に加えて,リング試験片内に水溶性冷却剤(60cc)を密封し冷却効果の高い試験片を用いてその効果を調べた。その結果,以下の知見を得た。 すべり速度10.2m/sの場合,リング温度は55℃(冷却なし),31℃(冷却剤+エア),45℃(冷却剤のみ)で一定になった。冷却剤とエア冷却を併用すると24℃の温度低減効果があった。15m/sの場合,リング温度は105℃(冷却なし),75℃(冷却剤のみ)で,冷却剤の密封により30℃の温度低減効果があった。エアを吹き付けるとオイルカップ内の空気が乱れエアが油膜に衝突し油膜形成を妨げる場合があった。特にすべり速度が速い時には,摩擦係数を増加させリング温度を上昇させることがあった。19m/sの場合には,冷却剤が実験途中でリングから漏れ,冷却効果を示さなかった。漏れ対策が必要である。 以上の実験により,冷却剤密封試験片は優れた摩擦面温度低減効果を有し,その密封量を増やすことによって,更なる冷却効果が期待できると考えられる。
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