研究課題/領域番号 |
24560179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中迫 正一 呉工業高等専門学校, 機械工学分野, 教授 (30259923)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 機械要素 / 設計工学 / トライボロジー |
研究概要 |
本年度は,金属ナノ粒子含有潤滑油が摩耗特性に及ぼす影響を検討するため,四球式摩擦摩耗試験機を用いて摩耗試験を行った。試験球としては,直径が12.7mmの市販の軸受鋼SUJ2鋼球を使用した。潤滑油としては無添加タービン油を使用し,潤滑油に添加する金属ナノ粒子としては,銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を使用した。金属ナノ粒子の平均粒子直径は,銀ナノ粒子23.8nm,銅ナノ粒子29.4nm,ニッケルナノ粒子5.9nmである。本実験では,各金属ナノ粒子の添加濃度が摩耗特性に及ぼす影響を検討するため,各金属ナノ粒子の添加濃度(重量%)を0.2%,0.6%および1.0%に設定した。潤滑油に添加した各金属ナノ粒子の分散には,本経費で購入した超音波ホモジナイザーを使用した。 摩耗試験は,回転球の約1/3がつかる油浴潤滑条件下で実施した。試験条件としては,ASTM-D4172に準拠し,潤滑油の温度75℃,回転球の回転数1200rpm,垂直荷重392N一定とし,60min運転した。試験球の摩耗特性に関しては,試験終了後の固定球に生じた摩耗こん直径により評価した。四球式摩擦摩耗試験機を用いて,金属ナノ粒子含有潤滑油の耐摩耗性能について検討した結果,以下のことが明らかとなった。 1.銀ナノ粒子を添加した場合,摩耗こん直径は無添加の場合とほぼ等しい。したがって,摩耗特性に及ぼす銀ナノ粒子の効果はほとんど見受けられない。 2.銅ナノ粒子は摩耗特性の改善に有効な金属ナノ粒子であり,その添加濃度は0.2%~0.6%が最適であることが明らかになった。 3.ニッケルナノ粒子の場合,添加濃度が0.6%~1.0%の場合では,摩耗特性に及ぼすニッケルナノ粒子の効果はほとんど見受けられない。しかしながら,添加濃度が0.2%の場合では,摩耗こん直径は約28%減少しており,添加濃度に大きく依存することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,四球試験における金属ナノ粒子含有潤滑油の耐摩耗性能を検討した。その結果,銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を含有した潤滑油の摩耗特性について実験的に明らかにした。さらに,各金属ナノ粒子の添加濃度が摩耗特性に及ぼす影響についても明らかになった。なお,現在,X線光電子分光法により,接触面の成分分析を継続的に進めており,実験結果の詳細な解明に取り組んでいる。 本研究成果については,科学研究費助成事業の細目である設計工学・機械機能要素・トライボロジーの分野において,最も大規模な国際会議であるWTC 2013(5th World Tribology Congress)に講演申込を行ったところ,既に採択通知を受理している。本年度までに実施した研究成果は,平成25年9月に開催される上記の国際会議にて講演予定であり,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では,金属ナノ粒子含有潤滑油を動力伝達用歯車装置に適用するための基礎的研究として,平成24年度の実験結果より得られた,各種金属ナノ粒子の最適添加濃度を含有した潤滑油について,四球試験機を用いた焼付き試験を行い,耐焼付き性能に及ぼす金属ナノ粒子の効果を解明する。 試験球および試験機については,平成24年度と同様に市販のSUJ2鋼球を使用し,現有する四球試験機を用いて,回転球の約1/3がつかる油浴潤滑の状態で行う。潤滑油としては,市販の無添加タービン油に対して,平均粒子径5~30nmの銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を添加した,金属ナノ粒子含有潤滑油を使用する。各金属ナノ粒子の添加濃度(重量%)は,平成24年度の実験結果を踏まえて最適値に設定する。 試験条件は,ASTM-D2783「Standard Test Method for Measurement of Extreme-Pressure Properties of Lubricating Fluids (Four-Ball Method)」に準拠し,回転球の回転数1760rpm,潤滑油温度35℃の条件下で,負荷荷重を58.86N(6kgf)~7848N(800kgf)まで上昇させる荷重漸増方式で行う計画である。 耐焼付き性能については,摩擦力の測定,潤滑油温度の測定など表面損傷に伴うこれらの異常診断により行い,測定データは,現有するインテリジェントレコーダによりデジタル信号として連続的に記録する。また,表面粗さの測定,現有する測微顕微鏡による摩耗こん直径の測定および現有するX線マイクロアナライザー(EPMA)による接触面の観察などを総合的に判断して評価する。 焼付き試験より,金属ナノ粒子の違いに対する,限界PV値および焼付き臨界温度を算出し,金属ナノ粒子含有潤滑油の耐焼付き性能を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では,平均粒子径5~30nmの銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を潤滑油に添加することにより,接触面の摩擦・摩耗特性や耐スカッフィング性能を向上させることを計画している.この際,潤滑油に添加した金属ナノ粒子の分散状態が接触面の潤滑状態に大きく影響するものと考えられるため,平成24年度の設備備品費において超音波ホモジナイザーを購入したが,当該備品の納入金額が当初計画に比べて若干安価であり,未使用額が生じている。さらに,平成25年9月に開催予定である国際会議へ参加するための外国旅費を計上するため,計画的に次年度に繰り越している。 平成25年度では,上記の外国旅費に加えて,試験遂行のための金属ナノ粒子,潤滑油,試験球の購入に充当する計画である。
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