研究課題/領域番号 |
24560179
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中迫 正一 呉工業高等専門学校, 機械工学分野, 教授 (30259923)
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 機械要素 / 設計工学 / トライボロジー |
研究概要 |
本年度は,金属ナノ粒子含有潤滑油が焼付き強さに及ぼす影響を検討するため,四球式摩擦摩耗試験機を用いて焼付き試験を行った。試験球としては,直径が19.05mmの市販の軸受鋼SUJ2鋼球を使用した。試験球のマイクロビッカース硬さは約800HVである。また,試験球表面の算術平均粗さは0.04μm(最大高さ粗さ0.38μm)であった。潤滑油としては無添加タービン油(ISO-VG46)を使用し,潤滑油に添加する金属ナノ粒子としては,銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を使用した。金属ナノ粒子の平均粒子直径は,銀ナノ粒子23.8nm,銅ナノ粒子29.4nm,ニッケルナノ粒子5.9nmである。本実験では,各金属ナノ粒子の添加濃度が焼付き強さに及ぼす影響を検討するため,各金属ナノ粒子の添加濃度(重量%)を0.2%,0.6%および1.0%に設定した。潤滑油に添加した各金属ナノ粒子の分散には,本経費(平成24年度分)で購入した超音波ホモジナイザーを使用した。 焼付き試験は,回転球の約1/3がつかる油浴潤滑条件下で実施した。試験条件としては,回転球の回転数800rpm(滑り速度0.46m/s)一定とし,単位球当たりの垂直荷重を86.3Nから約40Nずつ1minごとに段階的に上昇させた。各試験段階では,最初の5sを荷重上昇区間,残りの55sを荷重一定区間として,焼付きが発生するまで連続的に運転を行った。四球式摩擦摩耗試験機を用いて,銀,銅,ニッケルナノ粒子を添加した金属ナノ粒子含有潤滑油の焼付き強さについて検討した結果,以下のことが明らかとなった。 1.銀,銅,ニッケルナノ粒子は,摩擦係数および潤滑油の温度上昇を低減する効果が僅かに認められる。 2.各潤滑油の焼付き荷重(単位球当たりの垂直荷重)は,368N~435Nであり,焼付き荷重に及ぼす銀,銅,ニッケルナノ粒子の効果はほとんど認められない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,四球試験における金属ナノ粒子含有潤滑油の耐焼付き性能を検討した。その結果,銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を含有した潤滑油の耐焼付き性能について実験的に明らかにした。なお,現在,X線光電子分光法により,接触面の成分分析を継続的に進めており,実験結果の詳細な解明に取り組んでいる。 本研究成果については,科学研究費助成事業の細目である設計工学・機械機能要素・トライボロジーの分野において,最も大規模な国際会議であるWTC 2013(5th World Tribology Congress)に採択され,研究成果の一部については,平成25年9月8日~13日にイタリア共和国・トリノで開催された上記の国際会議において講演しており,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では,銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を含有した潤滑油について,動力循環式歯車試験機を用いたスカッフィング試験を行い,歯車のスカッフィング損傷に対する金属ナノ粒子の効果を解明する。試験歯車はガス浸炭焼入れを施したSCM415H材を使用し,大・小歯車の歯数は40枚,18枚,歯幅10mm,モジュール4mmの標準平歯車を使用する。歯車試験は,現有する動力循環式歯車試験機を用いて油浴潤滑の状態で行う。潤滑油としては,市販の無添加タービン油(ISO-VG46)に対して,平均粒子直径5~30nmの銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を添加した金属ナノ粒子含有潤滑油を使用する。 試験条件は,小歯車の回転数を6000rpm一定とし,荷重漸増方式で行う。歯面荷重については,歯面上の瞬間温度上昇の最高値が10℃~250℃まで10℃ずつ上昇するように設定し,各試験段階における運転時間は10minとする。 スカッフィング強さについては,歯車騒音,歯車箱の振動加速度,潤滑油温度,歯車の本体温度の測定など,表面損傷に伴うこれらの異常診断により行う。また,歯幅方向および歯形方向の表面粗さの測定,現有するX線マイクロアナライザー(EPMA)による歯面の損傷状態などを総合的に判断して評価する。 スカッフィング試験より,金属ナノ粒子の違いに対するスカッフィング限界荷重および臨界温度を算出し,歯車のスカッフィング損傷に対する金属ナノ粒子含有潤滑油の動力伝達性能を解明する。さらに,これまでの耐スカッフィング性能に関する知見を併せて検討することにより,高速・高荷重条件下で運転される動力伝達用歯車装置に適応可能である金属ナノ粒子含有潤滑油の開発を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では,平均粒子直径5~30nmの銀,銅,ニッケル金属ナノ粒子を潤滑油に添加することにより,接触面の摩擦・摩耗特性や耐スカッフィング性能を向上させることを目的としている。平成24年度および平成25年度においては,四球試験による摩耗試験および焼付き試験を実施したが,四球試験における潤滑油量は約20~35mLであり,潤滑油に含有する金属ナノ粒子の添加量も少なく,金属ナノ粒子の使用量が当初計画に比べて若干少量であり,未使用額が生じている。 平成26年度に実施予定である動力循環式歯車試験機を用いたスカッフィング試験においては,潤滑油量は約2.5Lであり,金属ナノ粒子の使用量も大幅に増加するため,試験遂行のための金属ナノ粒子,潤滑油,試験歯車の購入に充当する計画である。
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