本年度は,金属ナノ粒子含有潤滑油が歯車の耐スカッフィング性能に及ぼす影響を検討するため,動力循環式歯車試験機を用いたスカッフィング試験を行った。試験歯車はガス浸炭焼入れを施したSCM415H材を使用し,大・小歯車の歯数は40枚,18枚,歯幅10mm,モジュール4mmの標準平歯車を使用した。潤滑油としては,市販の無添加タービン油(ISO-VG46)に対して,平均粒子直径29.4nmの銅ナノ粒子を添加した金属ナノ粒子含有潤滑油を使用した。銅ナノ粒子の添加濃度(重量%)は0.2%に設定し,潤滑油に添加した銅ナノ粒子の分散には,本経費(平成24年度分)で購入した超音波ホモジナイザーを使用した。潤滑油の給油方法としては,大歯車の最下位の歯たけの約2倍がつかる油さら法とし,この場合の油量は約2.7Lであった。 スカッフィング試験条件は,小歯車の回転数を6000rpm(ピッチ点における周速度22.6m/s)一定とし,歯面荷重をスカッフィングが発生するまで段階的に増加させた。歯面荷重については,歯面上の瞬間温度上昇の最高値が100℃~950℃まで50℃ずつ上昇するように設定し,各試験段階における運転時間は10minとした。 動力循環式歯車試験機を用いて,銅ナノ粒子を添加した金属ナノ粒子含有潤滑油の耐スカッフィング性能について検討した結果,以下のことが明らかとなった。 1.銅ナノ粒子を添加した潤滑油のスカッフィング限界荷重は2093N/mmであった。無添加タービン油の場合の限界荷重(1895N/mm)と比べて約200N/mm増加しており,歯車の耐スカッフィング性能に及ぼす銅ナノ粒子の効果が認められた。 2.銅ナノ粒子を添加した潤滑油の運験中における歯車騒音および歯車箱の振動加速度は,無添加タービン油の場合とほぼ等しく,歯車の運転性能に及ぼす銅ナノ粒子の効果はほとんど認められない。
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