本研究は,フォトクロミック色素マーキング法によって界面流動の解析を行うための計測方法を構築すること,ならびに,それを用いて具体的な界面流動の解析を行うことを目的としている.研究の初年度である平成24年度は,フォトクロミック色素の濃度や紫外レーザー光の照射条件を最適化することに主眼を置き,様々な流れの解析に適用可能な条件を明らかにすることができた.研究の2年度目には,具体的な測定対象として液体の微粒化現象の基礎となる液膜噴流の流れを解析することにした.液膜噴流の分裂現象を把握するために,液膜の形成から破断に至るまでに液膜にどのような変形過程が発生するかを本研究で構築した方法を用いて計測した.特に,本方法によって液膜上に4点のマーキングを行い,流下とともにそれらの点の相対的な位置関係がどのように変化するかを求め,液膜に作用するせん断流れや伸び,回転等の状態を計測した.その結果,液膜流が破断に至る過程では流下方向と直角な方向の伸び変形が主に起こり,回転運動は小さいことなどを詳細に把握することができた.平成25年度後半から平成26年度にかけては,さらに壁面を流下する液膜の流動特性を把握する研究を行った.具体的には壁面を流下する液膜にマーキングを行い,液体の流加速度と波の速度を比較した.一般に,液膜表面に発生する波動と液体の流下速度は異なることが知られているが,様々な条件下(壁面角度や流下流量など)で,これらの速度がどのように変化するかを明らかにすることができた.これらの研究についてはほぼ当初の予定通りの成果を得ることができた.
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